感傷的になる米国市民。オバマ大統領が「お別れ演説」で語ること

Evan El-Amin / Shutterstock, Inc.Evan El-Amin / Shutterstock, Inc.
 

海外のメディアで報じられたニュースを解説する『心をつなぐ英会話メルマガ』では、日本のマスコミではあまり報じられない切り口で、本当はどういう意味で報じられているのかを詳しく伝えています。

今週のテーマは、「オバマ大統領の「お別れ演説」が語ること」です。
【海外ニュース】

Our Constitution is a remarkable, beautiful gift. But it’s really just a piece of parchment. It has no power on its own. We, the people, give it power – with our participation, and the choices we make.

【訳】我々の憲法は素晴らしい、見事な贈り物です。しかしそれは文章に過ぎません。それ自体には力はないのです。我々が参加してそして選択することで、我々国民がそれに力を与えるのです。
(オバマ大統領のお別れ演説より)

【ニュース解説】

いよいよアメリカで政権が交代します。それに先立って、オバマ大統領がシカゴで大統領としては最後の、お別れの演説Farewell Addressを行いました。その内容が素晴らしかったと、多くの人が拍手をおくっています。

アメリカにとって、大統領とは決して最高権力者ではありません。地方分権が日本よりはるかに徹底しているアメリカでは、大統領は行政の長というよりも、国家の象徴としての意味合いが強いのです。今回のお別れの演説は、そうしたアメリカという国家のビジョンの牽引者としての大統領のあり方を国民に強く問いかけたものでした。アメリカの大統領とは、アメリカという国家の哲学を象徴するシンボルなのです。

では、アメリカのビジョン、そして哲学とは何でしょう。

オバマ大統領は、アメリカの独立宣言に記された有名な言葉を引用し、以来その言葉の持つ意味をアメリカは追い続け、戦い、左右に揺れながら現在に至っていると強調します。それは、独立宣言の中のAll men are created equal.(全ての人は平等に創造されている)という一節です。これが、アメリカの民主主義の原点で、そのあり方をめぐってアメリカは独立以来240年にわたり試行錯誤を繰り返してきたのです。

アメリカは歴史上ずっと移民を受け入れて大きくなった稀有な国家です。ですから、移民が増え、それが多様になればなるほど、この equalという言葉の解釈や意義が常に問われ、拡大してきたのです。この長い道のりをこれからもアメリカが歩むためには、そこに住む市民がその過程に積極的に参加してゆかなければならないのだとオバマ大統領は強調したのです。彼は暗に、市民が積極的に参加しないことと、選挙での投票率の低さとを関連づけ、ネット社会では安易に国家のビジョンが毀損されかねないことへの警鐘を鳴らしています。これはいうまでもなく、トランプ次期大統領への警告でもありました。

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