カリスマ投資家がカンブリア宮殿で語る「ブレイク企業」発掘の法則

 

資産運用のカリスマに密着~大儲け生む“お宝企業”探し

宮崎市郊外の国道脇を歩く藤野。大きなリュックを片手に、最も重要な仕事という会社訪問にやって来た。それにしても随分と遠い。でも、これも会社を知る要素だという。

「多少離れていても、本社は地代が安いほうがいいという考え方ではないかと思います」

ようやく見えてきた本社の建物だが、本社なのに看板もない。一方、この会社の名前は国道沿いなどで見ることができる。その名も「WASHハウス」。九州を中心に約350店を展開する、年商31億円のコインランドリーチェーンだ。店内の端末で様々な情報が得られるなど、ユニークな店づくりで成長している。

狙うのはこういった知られざる地方企業。藤野は2016年11月、東証マザーズに上場したばかりのWASHハウスの将来性を品定めにやってきたのだ。

まずは最初に現れた女性と名刺交換。すると、その名刺をしげしげと眺め始めた

「名刺は会社の個性を表します。どういうロゴか、何が書いてあるのか。裏にたくさん思いを書いてある会社もあります」

藤野が企業を見る上で最も重要な要素だという経営者が登場した。今後のビジネスについて話し始めた児玉康孝社長。本社に看板がないのは、「看板を出すとお客が洗濯しに来ちゃうから」と言う。藤野の目が吸い付くようにその様子を観察する。ちょっとした気配りなど、経営者の一挙手一投足が将来性を判断する材料になるという。

ひとしきり話した児玉社長、自慢の場所へ藤野を案内した。店舗を管理するモニタールーム。WASHハウスは人手が必要ないのがウリだという。すっかり感心した様子の藤野。

「これはいいなと興奮しました。謙虚と自信がよく混ざった方ですね。社長の中で明確に『全国展開して成功する』という青写真が描かれている。もちろん一本調子ではいかないと思いますが、これから地方で大きく伸びる経営者の典型かなと思いました」

知られざる未来の成長企業を誰よりも速く見つけて株を買い付け大きな利益を上げるそのためには足を運ぶことが最も重要だという。

「インターネットで得られる情報は個人もプロも変わらない。プロがどこで差別化できるかというと、インターネットにない情報をどれだけ取れるかだと思います」(藤野)

こうして探した成長が見込めそうな会社の株を、ひふみに集まった資金で買い付けていく。WASHハウスの株は、社長と親族の会社につぐ、第3位の大株主になるほど買い付けていた。実に全株式の9%以上、投資額は15億円に上った。

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企業の成長に大きな役割~「夢のある投資信託」とは?

そんな藤野はもともと大手投資会社で凄腕ファンドマネージャーとして活躍していた。

「外資系は給料がよかったので、給料だけ考えたらそこにいたほうがよかった。でもお金だけではなくがあって、日本には投資を伝える場がない、そういう商品がないな、と」

個人の投資資金で将来有望な企業を成長させる。藤野はそんな投資信託を作ることを決意。2008年にひふみ投信を立ち上げた。

実際、ひふみに集まった資金は企業の成長に大きな役割を果たしている

藤野が投資を行ってきた、富山市の朝日印刷。案内された印刷機で刷っていたのは、おなじみの頭痛薬のパッケージ。高性能な印刷機を揃えているからいい仕事が舞い込む。投資してもらった自由に使える資金があって初めてこんなマシンも買えるという。

積極的な設備投資により医薬品のパッケージでトップシェアとなった朝日印刷。年商は349億円と、藤野が最初に投資した20年前に比べて倍に増えている。

取締役の広田敏幸さんは「藤野さんが最初に来たのが工場。なかなかそういう投資家はいらっしゃいません。とてもありがたいです」と語る。

大チャンスを狙って、藤野がびっくりするような企業の株を買っていた。それがあの大塚家具。藤野はお家騒動以来低迷している大塚家具の株を、ひふみで買い付けていた。大塚久美子社長への期待だという。「いろいろなイメージがあると思いますが、お父さんと同じくらい家具への愛情がある。長期的に見れば回復して前よりも良くなると期待しています」と言う。

その大塚家具のショールームに人だかりが。そこには久美子社長の姿もあった。集まっているのはひふみの投資家たち。企業を知ってもらうため、藤野が開いている見学会だ。

藤野は、投資家が不安を感じる企業なら、その社長に直接引き合わせることまでして納得してもらうのだ。

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