京都の菓子司の作るお菓子の特徴
菓子の命である季節を表現します。季節そのものだけではなく、その時期が来る期待感、盛りの時季、過ぎ去った季節への想いを表現するのです。都人ははこれを心で感じ楽しみます。
かつてある和菓子屋さんのご主人がこんな事を話されていました。それは桜の頃でした。毎日ある同じ場所の桜の葉や花の色を観察して、その色づきと同じように微妙に御菓子の色彩を変えていると。葉の黄緑色と花のピンク色の濃淡のバランスを毎日微妙に変えているのです。このような季節の移ろう姿を一年中観察して表現してお客さんをもてなしているのです。
京都の御菓子には名前がついているものが少なくありません。京菓子は、具体的にものの形を表現したものが多いですが、象徴的であったり抽象的に表現したものが多くあリます。これらを分かりやすくするために「銘」をつけるのです。
色や形が雅やかなのも特徴的です。「はんなり」とした柔らかい色調で、十二単のような色目を重ねるようなものを目にします。形も江戸時代の元禄の頃から京都ではやった「琳派」(りんぱ)の型や文様がよく用いられています。
そして、京菓子は人をもてなす贈答の品として「主(あるじ)」から「客(きゃく)」へのメッセージを伝える役割を果たしました。和菓子は人の心を伝える食べ物として1,000年以上の歴史を持つものなのです。
しかし、現在お菓子屋を取り巻く環境は大きく変化しています。機械化が進み大量生産、大量販売が主流になっています。家の形態の変化も大きな影響を与えています。各家庭から床の間や座布団といった客人をもてなす空間がなくなりつつあります。家に招く人はせいぜい友達や知人、親戚です。お客様はもう家には来なくなってしまったのです。
そうなると、客人をもてなすという菓子の役割はなくなってしまいます。近代化が進み季節感を感じる機会がなくなると、菓子に込められた季節感や物語のようなものも薄れてきます。
このように和菓子には果たすべき役割がいくつもありました。その全ては日本人の心を表現するものだったり、日本の四季を感じ、客人と共有するものでした。我々は、そのことを思い起こして、日常生活の中でそこに秘められた貴族的な要素や日本固有の文化を感じ伝えていきたいものです。
いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。
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