年金の「支給開始年齢の引き上げ」は国民へのイジ悪なのか?

 

さて、いずれ68~70歳とかに支給開始年齢が上がる日が来るかもしれませんが、支給開始年齢を上げる時はいきなり上げません。大体、十数年とか20年くらいの年月をかけて上げていきます。いきなり上げたら生活設計狂うから。だけど、歴史的に今まで支給開始年齢を上げる時はそう簡単にはいかなかった。当然強い反発があるから。まず、支給開始年齢を上げる時は雇用の問題というのはセットです。

当時の厚生省(今の厚労省)が支給開始年齢を上げなければヤバイ!! と、支給開始年齢を上げようとしたのは昭和55年から(年金支給開始年齢60歳から65歳に上げる)。しかし、まだ定年が55歳という企業が多くて野党や労働者団体、日経連も猛烈に反発して、当時の自民党も反対したので断念。

別に今すぐ上げるわけじゃなくて20年とかそのくらいかけながら、その間に雇用対策も頑張りながら支給開始年齢を上げようって話だったのに(^^;; 諸外国はその頃はもう大半が65歳支給開始年齢に決めていた。

なぜ支給開始年齢を上げようとしたかというと、昭和30年くらいは平均寿命が男63歳で女67歳だったのが、昭和55年では男73歳で女78歳になって長生きする人が増え、また、年金制度ができてから年金受給権を得た人が退職して年金世代に突入する人が急増し始めたから。平均寿命が50~60歳くらいの時に作った年金制度をそのままにしておく自体無理がある。

支給開始年齢を上げようと再度、昭和60年改正、平成元年改正の時も年金支給開始年齢の60歳から65歳への引き上げを国会に提出するも法案が見送られた。昭和60年に女子の平均寿命はついに80歳になった。でもとりあえず、昭和60年改正の時に女子の厚生年金支給開始年齢と共済組合の支給開始年齢がまだ55歳だったから、この辺は60歳に引き上げられた。女子は昭和62年から平成11年にかけて、共済組合は昭和60年から平成7年にかけて引き上げた。

その間、昭和45年に年間年金給付が1兆円弱だったのが、昭和55年で年間10兆円程に膨れ上がった。その10年後の平成2年には年間24兆円になった。更にその10年後の平成12年には年間41兆円になった。平成22年には53兆円になり、今現在は57兆円程

で、やっと厚生年金の支給開始年齢引き上げが決まったのは平成6年で、実際の引き上げが始まったのは平成13(2001)年からなんです。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

65歳までの支給開始年齢引き上げスケジュールはこんな感じで進んでいます。なお、共済組合は男女とも男子の厚生年金支給開始年齢と同じスケジュール。

どうして厚生年金支給開始年齢は男女で5年の差があるのか?(メルマガ参考記事)

支給開始年齢引き上げないとヤバイ! って昭和55年に今の厚労省が引き上げ求めてから平成13年の着手まで実に20年くらい先延ばしされたんです。

65歳に完璧に引き上げ完了するのは、2030年。まだまだ先の話。60歳から65歳に引き伸ばす為に、昭和55(1980)年から支給開始年齢引き上げに着手したかった事を2030年でやっと完了するわけですね。ちなみに、今年60歳になる昭和32年生まれの女子の厚生年金支給はまだ60歳から。

やっと政府が平成6年に厚生年金の支給開始年齢の引き上げを受け入れたのは、定年の60歳未満を禁止にして、さらに65歳までの継続雇用なんかを企業に努力しましょうって法律で決めたから。60歳定年後の雇用継続や再雇用なんかは普通は給与が下がるから、60歳到達時賃金よりその後の給与が75%未満に下がるようであれば、最長65歳まで雇用保険からの給付金(今現在は下がった給与の最大15%支給)も導入された。

しかし…今の平均寿命が男81歳で女87歳の時代にまだ完全に支給開始年齢が65歳になりきってないというのはなんとものんびりな話です。女子は2050年には平均寿命90歳代突入の見通しですからね(^^;;

支給開始年齢を上げるっていうのは年金財政を安定させる為には非常に有効ではあるんですが、そう簡単に決めさせてくれないし、決まってもゆーっくり引き伸ばすから、いきなり支給開始年齢が68歳とか70歳に決まる事は無いです。

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