年金の「支給開始年齢の引き上げ」は国民へのイジ悪なのか?

 

話は変わりますが、今の年金額じゃそもそも暮らせない! 上げてもらわなければ困る! っていう声は確かに切実な問題ではあるんですよ。僕も多くの人の年金額を相談で見て来ましたが、複雑な気持ちにさせる年金額の人がいっぱいいました。それに今までの年金加入記録や、また、その時その時の生まれた時代の背景もあるしで、特例なども沢山あるから、一人一人年金額はもうバラバラなんです。

ただ、今みたいに経済が停滞してるような時期に年金を上げるというのはやはり危険です。年金の主な財源は現役世代の保険料

国民の4割が年金を払ってない、は本当なのか? 年金のプロが検証(まぐまぐニュース参考記事)

今の年金給付費は年間57兆円ですが、保険料収入から40兆円くらいで、税金から10兆円ちょい、積立金(今は144兆くらい)の運用収入から5兆円前後くらいで賄ってる。

年金積立金が運用で減ろうもんなら年金大変だ! もう年金貰えなくなる!! って世間は大騒ぎますが、積立金から主に支払ってるわけじゃないですからね(^^;; あくまで流動的というか補助的というか。

その年の運用が悪くて積立金が何兆円か減っちゃうと、メディアもいかにも大変な自体が起こったかのような報道をしますが、何おかしな所で不安煽ってんだろう? といつも思います。そりゃ何十年も長期的に運用していくわけだから運用が良かったり悪かったりする時もありますよ。

ていうか、日本の積立金はそもそも巨額すぎる。だから平成16年改正の時に当時の年金給付の3~4年分あった積立金は多すぎだから、積立金を取り崩しつつ年金給付に充てながら将来的には1年分くらいまで減らそうってなったんです。

ちなみに平成13年に積立金の自主運用が始まってから今まで50~60兆は収益上げてきてますからね。平均収益率が年率3%くらいプラス。なんていうか、その年その年だけの運用状況に一喜一憂して全体を見ようとしない。

また、逆に140兆も積立金あるんならそれから年金を主に支払えば? って思われた人もいるかもしれませんが、たかだか140兆程度の積立金では年金給付は3年ももちません。だって、上記のように年金を年間57兆円払ってるわけなので(笑)。

ところで、年金額を上げるというのは、保険料も上げないといけない。しかし、デフレで給料が上がらない中で保険料ばっかり上げるような事をすれば年金世代の支え手である現役世代の生活は潰れてしまいかねないから、年金受給者世代も打撃を被る事になります。

昭和30年から昭和49年になるまでは高度経済成長期といって、経済がどんどん成長するから給料も毎年ぐんぐん上がりました。例えば、従業員30人以上の労働者の平均賃金が昭和30年に月1万3,000円くらいだったのが昭和40年には2万5,000円くらいになって、昭和50年には7万5,000円くらいになった。

まあ、昭和48年11月の第一次オイルショックが起きるまでは経済成長は著しいものでした。余談ですが、この時のオイルショックで16%物価が上がって、更にその翌年の昭和49年の物価は21%上がったんですよ(^^;; だから年金も物価が上がった年の翌年に同じ率上げたから、一気に年金も上がったりしたんですけどね。年金を物価変動に連動させるっていう物価スライド制が導入されたのは昭和48年改正だったから、丁度のタイミングでありました。

オイルショックで経済成長が急激に鈍り始め税収が落ち込み、昭和50年に初めて財政赤字(国の税収より支出が多くなる)が発生したけれども、平成3年のバブル崩壊までは、とりあえず経済成長は右肩上がりだったんです(バブル崩壊までは経済の安定成長期だった。中成長期ともいう)。それ以降の平成の時代はずっと経済は停滞。物価も賃金も上がらないとか、逆にマイナス。

経済成長もするし、給料上がっている時は保険料を上げてもいいかもしれませんが、実際平成16年の年金大改正が行われるまでは、せめて夫婦合わせての年金が男子の現役時代の給料の60%台は確保する為に、保険料の額をその給付に見合うように5年ごとの年金額の再計算で決めていきました。

でも、経済は成長しないし給料が上がらない、少子高齢化は進む一方なのに、その現役時代に対して年金60%台に見合う為の保険料ばっかりぶん取ったら現役世代はたまりませんよね。しかもこれからもますます高齢者が増え、少子化は改善しない中で年金給付は今まで通り! 逆に上げろ! っていっても無理があります。合計特殊出生率もこの間1.46から1.44に下がりました(最低だったのは平成17年の1.26)。で、2016年に出生数は初めて100万人を切った

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