次々と情けない日本人の言動を嘆く牧子さん。あとがきにある、京大チームの興味深い実験結果の話がよかった。生後6か月の乳児が「正義」を好意的に受け止めているのだ。Aバージョンの映像は、強者キャラが弱者キャラを攻撃している。赤い人形がそれを見ているが、助けに行かない。見ているだけだ。
Bバージョンの映像は、強者が弱者を攻撃するのは同じだが、青い人形が見ていて、弱者を助けに入る。この二種類の映像を乳児たちに見せた後で、弱者を助けなかった赤い人形と、助けた青い人形を同時に差し出した。すると、母親らに抱っこされた乳児たちは、赤と青の人形を交互に見て、青い人形に手を伸ばす。
じつに20人中17人が青い人形にタッチした。京大チームは「弱者に対する攻撃を止める行動」に、乳児が共感を覚えた可能性があると、海外の科学誌電子版に発表した。京大チームは「正義への憧れは生まれつき備わった性質なのではないか。いじめの理解や解決につながるかもしれない」としている。内舘牧子はこの説を信じる。わたしも信じたい。どこを読んでも、堂々「寄り切り」の牧子さんである。
編集長 柴田忠男
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