その先のシナリオ(思考実験)
仮に2017年の年末に北朝鮮問題をカネで解決できれば、株と景気には追い風になるでしょうし、そうなればトランプの中間選挙勝利も展望に入ってきます。
ですが、問題は2018年に入ると、国際情勢としては北朝鮮ではなく中東が怪しくなる可能性があることです。トルコの動揺、クルドの悲劇的な孤立、何としてもトラブルを大爆発させて原油価格を上げたいサウジとロシアというような、各プレーヤーの思惑を前提にすると、どう考えても「トラ(大統領)=レックス(国務長官)」はマネージできていないからです。
北朝鮮を軸としたトラブルに関しては、日米中、更にロシアに韓国、この5つのプレーヤーの利害は基本的に一致します、つまり「何とか現状維持、それがダメでもできる限り穏便に」ということで、5者にそんなにブレはありません。
ですが、中東に関してはそんな甘い状況ではないと思います。5つぐらいの未知数を抱えた多元多次連立方程式で、基本的に全てを満たす解はないからです。
仮に2018年前半に新たな中東危機の場合、2018年の中間選挙はトラが思い切りタカ派的に振る舞って共和党辛勝、一方で株や景気はクラッシュして、世界経済は難しくなるかもしれません。
そのタイミングで、小池さんは思い切り「ホーキッシュ(タカ派的)」なアプローチで、それこそシリア=トルコ戦線に自衛隊を出せぐらいの言い方で、攻めて来る可能性があります。
そこで、初めて(本当はもっと早く気づいて欲しいのですが)枝野さんが共産党と決別して、実務家を引き連れて岸田さんのグループに合流する、その上で、
「小池グループ・・・・・・中東に深く関与」
「岸田・枝野グループ・・・専守防衛を堅持」
という対立軸になって、世論としても少し冷静な判断ができるようになる、そんなシナリオが一つ描けるのではないでしょうか。
財政規律に関する対立軸のあり方
少々先のことまで想像力を巡らせてしまいましたが、では、改めて今回の衆院選について、現在の情勢では対立軸の方向性はどうなっているのでしょうか?
まず、「財政規律か、短期的な景気刺激か?」という問題ですが、以前の民主党的な「緊縮+財政規律」という主張は、主だった勢力はやっていません。違いがあるとしたら、自公は10%への消費税引き上げで「子育て支援」をやると言っている、これに対して希望も立憲民主などは「税率アップはやらない」という姿勢だと思います。
悪く言えば、財政規律を投げ出しているという風にも見えるのですが、これには理由がないわけではありません。まず日本の国家債務はGDPの100%を超えて危険水域だというのは変わりませんが、他の国、特に米欧の財政規律が緩みつつある中で、日本は「相対的には優等生」になっているのです。
ですから、仮に国際市場からファイナンスをするという場合も、著しく不利な条件にはならないと思われます。勿論、人口減を前提に財政を良くする必要はあるのですが、切迫した問題ではないということです。これが、「財政規律問題」が争点になっていない理由だと思います。
もう一つ埋没しているのが「都市と地方」という対立軸です。小池さんのところは、確信犯的に「都市型の小さな政府論」であり、地方に関しては「道州制で更にリストラを進める」という厳しい姿勢です。では、自公はというと、地方創生を言っている割には具体案が乏しいようで、今回の選挙戦としては、それほど盛り上がりそうもありません。
ただ、地方の問題に関しては参院では大きな問題になるので、2019年の参院選へ向けては議論は活発化するかもしれません。仮にそうだとすると、少々遅すぎる観もありますが。