世界で売れる絶品を探せ~人気を支える本当の理由
コストコが新しい店を出す際、必ず行っていることがある。その地域の優良な商品を発掘し、店頭に並べるようにすることだ。例えば浜松倉庫店なら地元で、絶大な人気を誇る相馬のパンや、「楽器の街」ということでデジタルのグランドピアノを販売した。
そのオープンからさかのぼること2ヶ月前。静岡市葵区の山の中にコストコのバイヤー、商品購買部・角薫の姿があった。浜松店で売り出す名産品の買い付けに来ていたのだ。
見に来たのは山肌を鮮やかに染めた茶葉。茶畑だ。作られているのは、徳川家康にも献上された由緒あるお茶「本山茶」。実はブランド化に出遅れ、静岡茶の中では埋もれた存在となっていた。「すごいんですよ、この甘みが」と角。本山茶は浜松店の新商品として、売られることが決まった。お茶農家の中山雅之さんは「コストコに入れただけでもすごいな」と、信じられない様子だ。
そして迎えたオープン当日、売り場に本山茶がズラリと並んだ。中山さんもお手伝いに来て、客に試飲を勧めている。「美味しい、美味しい」の声に、中山さんも感無量。「本山茶という名前も広まるし、いいことばかり。嬉しい限りです」と言う。
スタジオでテリオはこう語っている。
「コストコに商品が並ぶということは大量販売に繋がるので、地元メーカーにとって大きなメリットがあります。さらにコストコの近くにあるメーカーであれば、物流のコストも節約できます。結果的に地域の経済も活性化するはずです。地元企業と協力すれば、様々ないいことが生まれるんです」
一方、村上龍はコストコのホームページの採用に関する一文に注目した。そこには「コストコは、『機会均等主義をとっている企業』です。人種、宗教、肌の色、性別、年齢、身体障害、国籍、又は同性愛者か否かに係わらず、最適な人材を雇用し、各職務に就ける様、心がけています……」とあった。
「これはとても重要です。コストコは、同じレベルの仕事であれば、都会だろうが田舎だろうが同じ給料です。全員が平等。それが我々の大切にしている価値観なのです」(テリオ)
~村上龍の編集後記~
コストコは、日本に進出するとき、業務提携先を得られなかった。だがビジネスモデルを変えようとはしなかった。自分たちのやり方を貫いた。
「品質、低価格、清潔で安全な環境を追求し続けていれば、世界中どこでも成功する」
その戦略は、「人類は平等でなければならないし、共有すべき価値観があるはずだ」という哲学に基づく。それが、真のグローバルスタンダードだと思う。
従業員の採用では差別を排除し、徹底的に機会均等を守る。コストコのビジネスは、「フェアネス」「公正」という普遍的な源流に支えられている。
<出演者略歴>
ケン・テリオ 1958年、カナダ生まれ。1975年、小売会社に就職。1995年、コストコホールセールカナダに転職。1998年、コストコ日本進出スタッフに選出。2009年、コストコホールセールジャパン社長就任。
image by: Alastair Wallace / Shutterstock.com
source:テレビ東京「カンブリア宮殿」