怒れるトランプ大統領が、北朝鮮に強く当たれない5つの理由

 

1点目としては、大統領の支持率が再び低迷している中、外交上の失敗は許されない状況があります。ティラーソン国務長官との確執なども報じられる中で、今回の東アジア歴訪が失敗するようでは、政権は窮地に陥るからです。

その成功失敗というのはどういう意味かと言うと、今回歴訪において、日米、韓米、米中の3セットの首脳会談において、特に北朝鮮政策についての結論が「一致するか?」あるいは「齟齬が浮き彫りになるか?」と言う点に注目したいと思います。

特に、日米韓で合意された方向性について、中国で習近平から「ちゃぶ台返し」を食らうようでは、アメリカの威信は地に落ちてしまいます。反対に、今回の歴訪の順番としては「コミュニケーションの近い順」に並べてあるわけですが、日米で合意されたことが、米韓でも基本的に踏襲され、米中の声明でもそこに矛盾がないということになれば、「米国主導の調整が機能したことの証明になります。

2点目として、その中国への訪問が「党大会での新体制発足の直後というタイミングに設定されているということがあります。どうして、このタイミングなのかと言うと、勿論、権力基盤を固めた習近平体制への祝賀のためではありません。まず、大きな問題に関する新しい合意を行うのであれば、「新体制」が発足した後の中国との合意でなければ、合意の意味がないと言うことがあります。

また、新体制直後というタイミングを考えると「トラブルを避けたいという中国側の政権事情も計算しているはずです。また、そうであるならば、「落とし所」とは習近平「新体制」の呑める、しかも中国の言う「新時代」に動揺を与えない種類のチョイスになるはずです。このタイミングから考えると、強硬策というのは余りに非現実的と思います。

3点目としては、アフガン戦争とイラク戦争の結果、米国世論には強い厭戦意識があるわけです。トランプ大統領には言動を通じて好戦的なイメージもあるわけですが、実はこの2つの戦争を批判し、孤立主義のセンチメントをバネに登場した大統領でもあります。「外交的解決」を志向したからといって、「強気のトランプが弱気に転じた」として「コアの支持層が離反する可能性はないでしょう。

4点目ですが、現在の東アジアというのは米国経済の生命線です。多くのハイテク企業が、東アジアに生産拠点もしくは生産のパートナーを有していますし、同時にこの地域はその主要市場でもあるわけです。特に米国の基幹産業と言っていい、スマホのビジネスに関してはそうです。ですから、この地域の戦火は、米経済、とりわけ株価に大きな影響を与えます。壊滅的なダメージになると言っても過言ではないでしょう。そして、株と景気の暗転はそのまま政権基盤の崩壊を意味します。

5点目としては、選挙公約としてトランプが「北朝鮮問題」について何を言って来たかという問題です。この点に関して彼は「中国の習近平をうまく利用してディールを成立させる」と何度も言い続けて来たわけです。そう考えると、やはり強硬策ではなく、中国を巻き込んだ「外交的解決」というのは、公約そのものの成就になるということが指摘できます。

print
いま読まれてます

  • 怒れるトランプ大統領が、北朝鮮に強く当たれない5つの理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け