「どうせ」発言を見逃すことは、子供の一生を左右する大問題だ

 

 5.他人を認める・他人から認められる

他人を認められる=自己肯定感が高い)子かどうか──それが明確にわかる場面があります。それは、隣で他の子が褒められた時。

自己肯定感の低い子は、他者からの評価で自分の価値を確認して、安心したいという欲求が常にあります。そのため、(自分ではなく)他の子が褒められると心穏やかではいられなくなります。「あの子ばかりが褒められて、自分は褒めてもらえないのではないか?」。そんな不安に駆られてしまうのです。

その結果、その子は強烈に自己アピールを始めます。例えば、先生が隣の子の絵を見ながら褒めた時をイメージしてください。

─アカネちゃん、上手に描けてるね。
「ねぇ、先生、ボクのも見て! ほら、上手でしょ!」

すぐにこんなふうにアピールを始めたりします。また、場合によっては、他の子を悪く言うことさえあります。

「えー、アカネちゃんは全然上手じゃないよ! だってここ、色がはみ出してるもん」
「でもね、ボクははみ出さないでちゃんと描けてるよ。ここにはパパとママも描いたんだよ。ね、すごいでしょ?」

このように「自分が褒めてもらう」ことや、「他の子を悪く言うことで、相対的に自分の評価を高くする」ことで、安心感を得ようとするのです。

ですが、こうした方法では、心の渇きは永遠に癒されることはありません。なぜなら、仮にそうした行動で褒めてもらうことができたり、他の子よりも高い評価が得られた気分になったとしても、そのことによって別のメッセージも同時に受け取ってしまうからです。その「別のメッセージ」というのは、

  • 絵が上手でなければダメ
  • 他の子より上手でなければ、評価されない

というもの。あれほど必死になって褒めてもらっていても、「人から評価されていなければいけない」という不安はむしろ強まってしまうだけ。いつまでたっても、自己肯定感は高まりません。そしてまた、不安に駆られて…を繰り返してしまうのです。

その反面、自己肯定感が高い子はどうでしょうか。自分自身に安心感と自信があるので、やみくもに他者と張り合う必要がありません。先生が隣の子の絵を褒めたとしても、

─アカネちゃん、上手に描けてるね。
「ほんとだ!アカネちゃん、上手だね~」

と一緒に感心してあげられるのです。こうして他者を素直に認めてあげていると、相手の自己肯定感も高まって、相手からも心から認めてもらうことができるようになります。

「アカネちゃん、ほんとに絵が上手だね!」
「うん、ありがと! セイタくんも、足が速くてサッカーも上手で、すごいよね!」

想像してみてください。この2つのタイプの子が、小学校に入ったら。どちらの子が、友達に恵まれて、豊かで楽しい毎日を過ごせるでしょうか。中学・高校で、教室でも部活でも充実した毎日を送れるでしょうか。社会人になって、部署の内外での良い協力関係を築き、大きな成果を挙げられるでしょうか。また、目上の人から可愛がられて、多くのチャンスを与えられるでしょうか。そして何よりも、子ども自身が、満足感のある、豊かな気持ちで日々を送れるでしょうか。

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