「年金廃止」を訴える専門家は、発言の重大性を認識しているのか

 

で…話を戻しますが、今までも何回か言ってきましたけど、年金受給者の年金をその時の現役世代の保険料で支えるという「世代間扶養」の考え方である公的年金が無くなれば私的な負担が増えるだけなんで、今よりも更なる負担が襲います。

公的年金の役割(日本年金機構)

つまり、今の老齢世代は子供世代や親族で支えてねって話になるだけであります。障害者の方々の生活資金である障害年金や大黒柱を失った遺族を支える遺族年金も無くなっちゃったらどうなるのでしょうか。そうなれば世の中はより混乱して非難轟々でしょう。

一昔前の昭和30年から昭和50年あたりまでは現役世代が自分の老齢の親世代だけでなく、配偶者や子供までも自分の収入で支えるという仕組みは成り立っていました。なぜなら戦後の経済はひたすら成長していって賃金も物価も上がりまくっていったからです。年率10%くらい賃金が上がるなんて当たり前だった。

年金額も昭和40年から現役世代の賃金との乖離を縮めるために、年金額をどんどん引き上げていきました。いわば、攻めの時代だったんです。そういう時代がありました。

でも平成3年のバブル崩壊を機に平成の時代は経済停滞期に入り、また、本格的な高齢化と少子化の突入により年金額を抑制する方向に行きました。年金制度を守る方向に進んだわけです。賃金も上がらず、自分の生活で手一杯となり夫婦で働きながら生計を立てる人も多くなり、平成9年からは専業主婦世帯数よりも夫婦共働き世帯数が逆転しました。

賃金が上がらないから子どもを産む事にますますセーブがかかり、少子化はますます進行する見通しとなりました(平成17年の合計特殊出生率1.26を底に今は1.44くらいにはなってる)。今は1億2,000万人くらいの人口ですが、2100年には5,000万人を切る見通しです。

経済が成長していた頃は、年金はせめて夫婦で現役男子の給与の60%以上の給付を確保しようと(よく言われる所得代替率というやつ)、先に年金額の大まかな給付を決めてからそれに必要な保険料を決めるという事をやっていました。しかし、経済が成長しないから現役世代が負担する保険料負担も次第に限界になってきて、平成16年改正の時に先に保険料負担の上限を決めて、その中で年金を支払おうという守りに入ったんです。

つまり、家に入ってくる収入の中で支出をやりくりするという事です。そうすれば家計は破綻しない。今はその収支の一致するところに持って行こうとしてるんですけどね。またこの辺の話をすると話が長くなりすぎるので割愛^^;。

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