ここにも迫る中国の影。親日の中央アジアを守る手立てはあるのか

 

中国が重視する中央アジア

今後の中央アジアは、国際的にみてもますます重要性を増してくるように思われる。中国はその点に早くから注目し中央アジア、東南アジア、西南アジアなどを巻き込んだ「上海協力機構」を設立し求心力を集めている。また、中国は上海協力機構とは別に現代の「シルクロード構想」(一帯一路)を公表し、欧州と中国を結ぶ新シルクロードの建設を着々と進めようとしている。

北のルートにはヨーロッパからカザフスタンを経て中国へ、従来のシルクロード・ルートは欧州から鉄道で文物を運び、さらに西アフリカからパキスタン、バングラデシュなどに港湾を建設し、新たに海のシルクロードを建設しているのだ。アフリカの鉱物資源などをインド洋を通って東南アジアのミャンマーなどに陸揚げし、その後は鉄道で中国へ運ぶ大構想だ。その資金調達はアジアインフラ投資銀行などを通じて行う考えだ。アジアのインフラ作りには中国の労働者を派遣し、居住させる手法で、いまやアフリカ、インド洋沿いに多くのチャイナタウンも出来ている

一帯一路とアジアインフラ投資銀行で社会主義強国をめざす

ただ中国のやり方はかなり強引なようで、資金と労働力をぶち込み建設するやり方には地元の反発もかなりあると聞く。

中国の戦略は、一帯一路の新シルクロード建設で公共事業を世界的規模で行い、その資金はアジアインフラ投資銀行で募集する。アジアとヨーロッパをつなぐ新シルクロードで物流の覇権を握り周辺国を巻き込む

一方で、南シナ海一帯の島々に港湾や航空用の滑走路を作り太平洋をアメリカと分割統治しようと目論んでいるようにみえる。さらにかつては陸軍国であった中国を海洋国、空軍力強化、サイバー強国、宇宙なども見据えた世界戦略で覇権国を目指そうとしている

いまや世界の覇権国争いはかつての米・ソに代わり米・中に変化してきた。特に中国は「中国の夢」として社会主義強国を目指すと宣言している。これまでの改革開放路線を維持しながらも中国らしい特色として「社会主義強国」をスローガンとし、社会主義にこだわっている。具体的には国内の富裕層と貧困層の二極化を解消し中間層を増大させることで社会の安定を目指す一方で、あくまでも欧米流の社会とは別の社会主義色をにじませるということのようだ。このため、今後も社会の腐敗追及には力を入れ、これをテコに習政権の求心力を維持していこうとする意図が伺える。

(TSR情報 2018年1月15日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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