そういえば以前、こんなことがありました。そのクライアントは、業績に伸び悩んでいました。そして、「営業は、先方へ出向くのが当たり前」という常識が社内にあり、業績を伸ばすには、もっと小まめに取引先に顔を出していこう! というスタンスを取っていたのです。よくあるパターンです。
ですが、扱っている商品の性質上、営業をかけても実際に成約に至るまでスパンがかかるものでしたので、営業マンが、つなぎで小まめに顔を出すだけでもコストがかかり、それもしんどくなってきたということでした。
「だったら、営業マンが出向くのではなく、お客様の方から、会社にわざわざ来てもらうようにしましょう!」ということを提案しました。これまでにそうした発想はなかったようでしたので、その提案に対して社内で話し合ってもらいました。
店舗営業でも無いし、ショールームがあるわけでも無いので…ということで、ほとんどの営業マンは反対しました。そして何より、「今までのやり方を変えるのが恐い。不安だ」というのが、主たる理由だったようです。
肝心の社長も「みんながそういうので…」と消極的でした。それこそ他人任せの決断をしようとしていたのです。「もし、『みんなが反対しているから』という理由だけで、何もやらずに後悔するのなら、それは勿体無い」と思いましたので、「社長自身は、この提案に対してどうお考えですか?」と尋ねると、「本音では取り組んでみたい」というのではありませんか。
だったら、ということで…、社長だけでも、今までのやり方を180度変え、お客様の方からわざわざ来てもらえるような仕組みを考え、実際に取り組んでもらいました。すると、前月は0だった新規の取引先が、1ヶ月ほどで6社、冬眠顧客が5社ほど復活し、成約に繋がったのです。
こうしたことを目の当たりにした反対派の営業マン達は、それまで当たり前のように行っていた御用聞きや、顔つなぎの為だけに取引先へ廻るという活動を止め、自分の顧客を自社へ来ていただく為にはどうすればいいか? という工夫を考え出すようになり、自ら積極的に取り組んで行きました。