中国と米国がガチで貿易戦争したら、悲鳴を上げるのはどっちだ?

 

鉄鋼・アルミは世界的な供給過剰状態にあり、アメリカのみならず、欧米でも中国産鉄鋼への強い反発があります。このような状態であるからこそ、アメリカは中国産鉄鋼・アルミに高関税をかけたわけです。

一方、中国は自国で供給不足にあり世界的にみても供給過剰ではないアメリカ産の農産物、畜産物に報復関税をかけたということになります。しかも、工業製品は生産調整が容易であるのに対して、農業・畜産物は天候や病害などによって生産は不安定です。すでに中国の食料自給率は8割台で食料輸入国に転落していますが、一人っ子政策を廃止したことや、高齢化社会による働き手不足によって、ますます食料自給率が下がっていくことは目に見えています

食糧問題はこれからの中国の最大のリスクとされてきました。その自らのウイークポイントにかかわるような産品に対して制裁措置を行うというのは、それしか手段がなかったということの表れです。そのため、そう長くは対米制裁措置を継続できないでしょうし、制裁が長期化すれば、むしろ首が締まるのは中国のほうなのです。

ちなみに、この米中の「貿易戦争」については、台湾も通商国家、貿易立国ですから、「被害が避けられない」という恨み節もよく聞かれます。しかし、台湾にとって「利益だ」という声も多いのです。私の見解としても、長期戦として長引いたほうが、中国以外の国にとっても「百利あって一害なし」だと思っています。

この米中貿易戦争について、多くの海外メディアや日本のメディアは、トランプ大統領こそ元凶だとしています。中国は「トランプ大統領は保護主義に走っている、中国は自由貿易を守ろうとしている」と主張し、これに賛同する識者も少なくありません。

しかし、中国における鉄鋼産業は国営企業が中心です。習近平は国営企業は潰さず、「国際市場において、より強く、より大きくする」と述べています。つまり、中国という国家を後ろ盾にした国営企業の存在感を国際市場において高めていくと宣言しているのです。どんなに赤字でも国が資金援助し、その国家の支援をもとに国営企業の国際競争力を強めていくと主張しているのです。

はたしてそれは「自由貿易」と言えるのでしょうか。国家が介入しない民間企業が主役の資本主義市場に、中国という強大な国家の力を背景とした国営企業が乗り込み、不当な廉売によって市場を奪っていく。これのどこが「自由経済」なのでしょうか。しかも中国は国内の民間企業、外資系企業に対して中国共産党の指導を強めるとしています。中国こそが経済統制に走り、自由経済の脅威となっているわけです。今回の「貿易戦争」には、そうした背景があることを認識すべきです。

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