政府による極めて高度な技術を用いた情報統制はネット企業、ハイテク企業にとって関税障壁のようなありがたい存在だ。高い競争力を持つ海外企業が参入できないので、国内企業だけで13億の市場を争えるからだ。中国は官民あげて情報統制を強化する、負のスパイラルができあがっている。政府は社会の動揺をさらなる規制強化で防ごうとし、国有・民間企業は率先して協力する。
民間企業が集積した個人情報や信用情報は国家に流出する。2018年中にすべての電子決済が人民銀行系の決済システム経由で行われるようになる。スマホでの電子決済取引は国家が完全に把握可能である。国民の大半は中国版LINEである微信などを利用しているが、通信内容は開発企業が自主検閲している。検閲対象語は1万以上ある。習近平似といわれる「くまのプーさん」も発信不可能w
著者の観察は細かく、ツッコミも豊富、資料もたくさん読まれているようなので、優れたレポートになっている。だが、「近現代史における日本の中国侵略は歴史的事実だから、多少の誇張があったとしても『歴史の改変』には当たらない」という、異様に中国に寛容なお方であった。ならば、国家の歴史認識と個人の人間関係を切り離せばいい、というステキなドリーマーである。
編集長 柴田忠男
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