ビジネスの場面と同じで、まずは親が自分の価値観・ビジョンを持って自覚する必要があります。
- 子どもにどう育って欲しいか
- 子どもがどのような行動・習慣を身につけたらよいと思うか
などです。これについては以前に第014・015・016号「子育ての目的とは(上~下)」で触れたこともありますし、個人毎に多様な価値観があることが自然なので、ここでは省きます。
次のプロセスは、その価値観・ビジョンを親子間で共有すること。会社組織とは違って、家庭ではこの点で大きくつまずくことはあまりないかも知れません。「あえて口に出して言っていることは少ないかな」と思うようであれば、言葉にして伝えるよう気に留めるだけで充分でしょう。3~4歳を過ぎれば、ちゃんと理解してくれます。
「パパはね、ウソだけはついちゃいけないと思うんだ」
「○○ちゃんが自分のことを自分でできるようになってほしいから、いろいろ教えたり手伝ったりするね」
そして最後が肝要なポイント、その価値観・ビジョンを具現化する仕組みです。子育てにおいては、
- 子どもを見守りながら
- 適切なインセンティブを
- 正しいタイミングで提供する
ことがその「仕組み」となります。特に注意が必要なポイントが2つあります。
(イ)インセンティブに「何を」提供するか
私の経験では、子どもにとってのインセンティブ=「うれしい状態」は以下のようにランク付けできると考えています。
(a)自分が満足していて、親にも認められている状態
(b)親に認めてもらえていないけど、少なくとも構ってもらえている状態
(c)親に構ってもらえていない状態
(ロ)正しいタイミングを逃さない
「言われたことをちゃんとできたら、褒める」との場合はあまり問題ないと思います。ただ、実際のところ親の価値観の中には「望ましいと思う状態では目に付きにくく、望ましくない状態になると気がつく」もの──具体的には「自分でやる」「××しない」など──が多く、注意が必要です。
この(イ)(ロ)の2点を見落とすと、
- 望ましい状態→親は気づかず無反応→インセンティブ(c)
- 望ましくない状態→親が気づいて反応→インセンティブ(b)
とのパターンを作ってしまうことが非常に多くなります。
下段での親の反応が「優しく指摘する」であれ「厳しく叱る」であれ、極論すると「叩く」であったとしても、(b)であることには変わりありません。親が(b)と(c)しか提供してあげられていないため、子どもは少しでもマシな(b)を受け取れる行動が「やりたいこと」になっていく、という悪循環が生み出されてしまうのです。
また、インセンティブ(a)を意識するあまり「すごいね」「えらいね」を連発してしまうことにも、別のリスクがあります(参考:第001号「『パパ、見て~』と言われたら?」)
うまく(a)を提供するコツは、子ども自身の「ひとりでできた!」という満足感、「ちゃんとわかるもん」という誇らしい気持ちに寄り添うスタンスです。その満足感や誇らしい気持ちを認めてあげるような声をかけてあげてください。