さよなら、アメリカ。それでも日本が中国と組んではいけない理由

 

中国の覇権獲得手段

中国は、製造業で得た貿易黒字を投資に回して経済成長をけん引してきた。製造業各社は、設備投資を行い拡大再生産してきたが、突然、米国が中国産製品の輸入を制限し始めたので、投資経済から転換が必要になっている。

国内投資は限界に来たために、一帯一路の海外投資にはけ口と求めたが、途上国への「債務の罠」と批判があり、あまり広げることもできなくなっている。日本の信用力を使い継続したいようであるが、日本企業もメリットがあるプロジェクトしか参加しないはず。

このため、国内消費経済にシフトさせ始めている。また、保護貿易で批判があり、中国としても自由貿易にシフトさせる必要があり、また知財権保護も求められているので、それも行い、かつ中国としても有利な国際秩序を模索する展開になっている。

その一環として、国際機関のトップを取り、中国流のルールを確立して覇権を目指すと思われる。

消費経済拡大の裏にいるのが、世界にネットワークを確立している日本企業の存在がある。中国の消費経済拡大で、日本企業が潤うという関係にあり、日本は中国との友好を必要としている。中国も自由貿易を行う上で日本を必要としている。

もう1つ、一党独裁体制維持のためと国民のレベル向上のために、中国社会は超管理社会になり、国民は信頼ポイントで管理されることになるので、犯罪が少なくなるようだ。これも覇権確立の一環とも見える。覇権国に相応しい内外の環境を整える方向のようだ。

ロシアの対抗手段

ロシアは歴史的に東に勢力を伸ばして、敵が東西にいる二正面作戦をする運命が有り、どちらかとは同盟関係して、一方向に攻めていくしかない国家である。太平洋戦争直前に日本と不可侵条約を結んだのも、西に兵を向けるためであった。

しかし、このままでいると、中国が覇権を取り、ロシアの勢力範囲をどんどん、中国の一帯一路で崩されていくことになる。

現時点、ロシアは軍事力を西に向け中東を支配下にしてその統治を確保することを優先している。しかし、同時に中央アジアを中国の影響力増大からどう守るかがテーマになっている。このため、東への軍事力を下げて、西や中央に軍事力を回したい状態である。また、経済的にも強化しないといけない。

もう1つ、ロシアは、中国包囲網を形成してきた。ベトナムやインドと友好国になり、ロシア製武器を供給して、中国に対抗してきたが、中国の経済力が増大してきて、ロシアだけでは対抗できない

そこに日本がインドとベトナムとの関係を緊密化してきている。目的は、中国の脅威の緩和であり、その意味では同じ目的を持っている。

このことを安倍首相もプーチン大統領も分かっているので、日露平和条約締結交渉になったのだ。日本の外交評論家は、目線を広く世界情勢を見ないので、日露交渉の意図が見えていないように感じる。両国の目的は中国の覇権獲得阻止である。

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