【書評】堺屋太一と渡部昇一が選んだ「日本を拓いた偉人たち」

 

というわけで、28人の偉人と関係する人たちを交えた「日本を支えた偉人」たちを語る。紫式部・光源氏=流行の先端にいる人たちを驚かせた『源氏物語』の世界観(渡部)。日本のトップは何も決定しないという伝統を作った光源氏(堺屋)。世界中で日本だけが一民族一国家一文明であることを象徴するのが『源氏物語』だ。こうなったら、橋本治『窯変源氏物語』に挑戦するかな。

江戸時代の石田梅岩は知らなかった。滅私奉公的な日本人の労働観を支えてきた人であり、宗教を相対化して心を磨く大切さに重きをおいた人でもある。日本人の感受性は松尾芭蕉の「わび」「さび」によってつくられた。西郷と比較されて人気薄の大久保利通だが、なりふりかまわず殖産興業を実現し、新日本の基礎をつくった大胆な改革者がこの人。大久保の後継者が伊藤博文である。

そして、戦後日本を発展させた政治・経済・文化のリーダーたちが続々と現れる。「所得倍増計画」の池田勇人。日本の高度成長を実現させた岸信介の安保改定。万国博覧会と沖縄返還、日本の青春時代のリーダー・佐藤栄作。国民的英雄になった、世界でも珍しい実業家・松下幸之助。名前を知る人ばかりだ。

この本の偉人は中学校の日本史教科書ではどう扱われているか。図書館で調べた。東京書籍の2016『新しい社会 歴史』には、渡部・堺屋の選んだ28人中13人しか入っていない。太安万侶、石田梅岩がいない。松下幸之助、小林一三、堤康次郎、五島慶太、豊田英二・章一郎、中内功、鈴木敏文、岡田卓也、松永貞一郎などの実業人は全滅。いくら左傾出版社といってもなあ。

編集長 柴田忠男

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