値引き体質からの脱却
3つ目は、安売りをやめたら業績が上がったお店の事例を紹介します。私はどんなアドバイスをしたのでしょう。
【事例3:値引きは当たり前】
スポーツ店は、値引きをして売るのが当たり前になっています。「他の店が安く売っているから」という理由のようです。小売業は、価格で勝負をするのが一番簡単な方法です。しかし、そのために店の利益が出なくては元も子もありません。
地域では名の通ったお店から相談がありました。話を聞いてみると、どうも粗利率が低いようです。そのお店の売上が昨年より10%ダウンしてしまいました。そうなると、赤字転落が見えています。何とかしなくてはなりません。
私は即座に「値引き販売の中止」を提案しました。お店はビックリです。「値上げをしたらお客様が来なくなってしまう!」。大丈夫です。実際にはそんなことにはなりません。もちろん、価格が安いから買いに来るお客様もいらっしゃいます。しかし、お店の魅力は価格だけではありません。
実は、値上げに一番反対するのは、販売スタッフです。今まで「他より安いですよ!」と言って販売してきました。そのセールストークが使えなくなってしまいます。お客様にどう勧めていいのか分かりません。そこで、全店の商品を値上げするのはもう少し後からにして、一部の商品を定価で販売することにします。販売スタッフに慣れてもらうためです。
そうしたら、その商品は今までと同じように売れていくではありませんか。スタッフの驚きは相当なものでした。
自分たちの常識が覆った瞬間です。「値引きをしなくても売れるのだ」という体験が出来ました。そして、商品そのものの良さを伝えるセールストークが身について行きました。その一方で、商品の見せ方や陳列方法にも工夫をし始めました。
その後、少しずつ定価で売る商品を増やしていきます。それでも販売をしていると、どうしても「他店の方が安い」という、一部のお客様の声が、まるで全員の声のように聞こえてきてしまいます。我慢です。すると、そのお客様のつぶやきも、徐々に減っていきました。その結果、このお店の業績はどうなったでしょうか?1年後、粗利率が5%上がり、売上も回復しました。良かったですね。
過去のやり方だけにしがみついていては、未来はありません。
■今日のツボ■
- 改めて店舗の方向性を考えることで、業績は良くなる
- 昨年対比で考えるのではなく、目標比で考えると計画が達成しやすい
- 値上げをしても、それ以上にお店の魅力を伝えられればお客様は離れない
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