国際交渉人が読み解く。トルコが主役の“中東シャッフル”SHOW

 

先週述べたように、サウジアラビアの盟友“だった”UAEはすでにサウジアラビアを見切ってイランに近づいていますし、そこに上記のような新しい構造の変化が見られるようになってきていることで、確実に中東地域は国際情勢におけるhotspotになってしまった感じがします。

この状況に笑いが止まらないのは、イスラエルのネタニヤフ首相でしょう。先の総選挙では思いの外、苦戦を強いられ、首相の座に留まることができるか不安要素が高まっていましたが、今回の中東勢力図のreshuffleとそれによる混乱は、彼にとっては「この混乱の中、イスラエルが生き残るには、やはり強いイスラエルが必要で、それを提供できるのはリクードの自分しかいない」というイメージを前面に打ち出すことができるようになるからです。

これでイランへの超強硬派の政策もサポートされやすくなるでしょうし、とてもfragileになってきている中東地域におけるサウジアラビアやトルコとのバランスを保つためのイスラエルの強いリーダーシップの必要性へのアピールができます。これにより、パレスチナには大変気の毒ですが、再度、クルド人同様、パレスチナ人へのイスラエルによる抑圧の度合いが高まる状況が再来するような気がします。

そして、もちろん、トランプ大統領はその方針を歓迎するでしょうが、もしかしたら、イスラエル以外の中東地域の戦略的な重要性が低下している中、アメリカの直接的な関与を弱め、イスラエルにもっと大きなフリーハンドを許すような戦略転換を行う可能性も秘めているように思えます。

この大幅でかつ広範にわたる中東情勢の変化のトリガーを弾いたのは、公約通り、中東地域からのアメリカ兵の帰還を促進したいトランプ大統領と、クルド人勢力をトルコ国内から一掃したいトルコ、そして、全土を再度掌握し、シリア内戦を終結させたいアサド大統領のシリアでしょう。そこに対立を深めるイランとサウジアラビアがスパイスを加え、出来上がったSHOWを見にロシアがやってきているという図式が描けるような気がします。

大きく勢力図が変わろうとしている中東地域での情勢転換が、地域はもちろん、世界情勢にどのような影響を与えるのか、close watchし、有事に備えておく必要があると考えています。

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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