遺産相続の際、遺言書の記載内容などによっては十分な遺産を受け取れないケースがよく聞かれます。そんなときに知っておくと損をしないのが、「遺留分」の請求権。日本人の中には苦手な方も多い法律の問題ですが、今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では現役弁護士の谷原誠さんが、「遺留分」の請求や証明、請求可能な期限などを解説してくださっています。
遺留分は1年で消滅する
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
今回も法律の話。
相続で「遺留分」という言葉を聞いたことがあると思います。たとえば、父親が遺言書で遺産の全てを長男に相続させたとします。相続人は長男と次男です。この場合、次男は相続で何も取得できなくなりますが、少なくとも少しは取得することができるようにしよう、という制度です。たとえ父親が遺言書で遺産の全てを長男に相続させようとしても、次男が「遺留分」を主張すれば、一定割合の財産を確保できることになります。請求される長男の方がびっくりですね。
遺留分を請求される立場の人は、こちら。
● 遺留分を請求されたら、こう対処する!|弁護士による相続SOS
さて、今年の7月1日より前は、この権利は、「遺留分減殺請求権」と呼ばれましたが、同日以降は、「遺留分侵害額請求権」という名称に変わっています。
改正前は、たとえば遺産が不動産の場合に、「遺留分減殺請求権」を行使すると、長男と次男の「共有」になっていました。しかし、改正後は、次男が「遺留分侵害額請求権」を行使すると、次男は、長男に「お金」を請求することができるようになった、ということです。
さて、今回は、この遺留分の権利は、1年間で消滅してしまう、というお話です。
遺留分は、相続開始になって自動的にもらえるものではありません。遺留分が欲しい人も欲しくない人もいるので、「遺留分の権利を行使します」と主張した人だけ財産を取得することができるようになっています。そして、遺言によって財産を取得した人の法律関係を不安定にさせないため、一定期間内に遺留分の権利を行使しない場合には、権利が消滅する、ということになっています。
これが、わずか「1年間」です。
いつから1年間かというと、「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」ということです。これらの事実を知らなかったとしても、「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知らなかったとしても、相続開始の時から10年」を経過した時も消滅します。1年間と比較的短い期間が定められていますので、迷っているうちに消滅してしまいます。
たとえば、先ほどの例で、遺産が1億円だったとすると、次男が請求できる遺留分は2,500万円分です。この2,500万円を請求できる権利が消滅し、1円も請求できなくなる、ということです。実際、私のところに相談に来た時には、すでに遺留分が時効によって消滅していた、という事例もあります。
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を行使したことを証明するためには、送ったことを証明できる内容証明郵便を使うのがよいでしょう。相続で遺留分の争いになると、自分で解決はなかなか難しいと思いますので、弁護士に相談しながら進めるようにしましょう。詳しくは、こちら。
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今日は、ここまで。
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