【書評】韓国が手の平返しをしないと生き残れない国となった理由

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 地理的条件が政治に与える影響を説明する学問、地政学。この理論を世界史にあてはめてみると、実に「理にかなっている」と言います。今回の無料メルマガ『おやじのための自炊講座』では著者のジミヘンさんが、読み進むのが惜しいほど面白かったと絶賛する、地政学で世界史を読む一冊を紹介しています。

世界史で学べ!地政学

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茂木誠 著/祥伝社

皆さん、お元気ですか。ジミヘンです。

書店で何気なく手に取った文庫本が、読み進むのが惜しいほど興味深く面白かった。こんなに興奮しながら読んだ本も珍しい。タイトルは『世界史で学べ!地政学』。著者は現役の予備校講師・茂木誠氏である。地政学とは「地理的条件が政治に与える影響を説明する学問」を言うが、国家戦略に根拠と正当性を与える学問だとしてタブー視されたことがあるようだ。

「アメリカは島である」「ヨーロッパは世界島から突き出した半島」など、マクロな視点に驚き、同時に「半島国家は、その『付け根』を制した大国に常に脅かされている」など歴史の検証をしたくなる楽しさがある。帝国主義時代、英国の地政学者・マッキンダーは、ランドパワー(内陸国家)とシーパワー(海洋国家)の抗争というモデルを示した。古来、モンゴル帝国などのランドパワーがヨーロッパへ侵攻し、英国・スペインなどのシーパワーが植民地を次々と獲得したが、やがてランドパワーのロシアとドイツが台頭する。これに対し、英・米・日などのシーパワー連合がこれに対抗しなければならないと説いた。

先ず、「中国」の歴史を見る。中国は代表的な「ランドパワー国家」である。地政学は、「国境を接していれば、領土紛争や移民問題が必ず発生する」と説く。中国の歴史は、正に北方遊牧民族との闘いの歴史であった。中国の長い歴史の中で、その半分に当たる1千年ほどは北方民族が中国を支配した(=隋・唐・元・清)。漢民族が建てたのは、秦・漢・宋・明だけである。つまり、中国という広大な国は多民族国家であり、現在も尚、チベットや新疆ウイグル地区などで民族問題を抱えている。日清戦争で中国海軍が日本海軍に破れてより、南シナ海へ出てこられなかった中国は、21世紀に入り変貌しようとしている。国産の空母を建造し、世界の海洋へ打って出る準備を着々と整えている。それに対し、米・日・ロシア・インドがどう対抗していくのか、その動向が注目される。

次に隣国「韓国」の歴史を見てみよう。地政学では「隣国同士は潜在的な敵だ」と考える。拠って、韓国(及び北朝鮮)と中国、韓国と日本の関係は、一筋縄ではいかぬ歴史を歩んできた。著者は、「侵略され続けた半島国家=朝鮮」の中で、こう述べている。

大陸がA帝国からB帝国に交代するとき、朝鮮の内部では親A派と親B派との激しい派閥抗争が起こり、親B派のクーデタによって王朝が交代し、前政権の人々は粛清される。

これが繰り返される。手の平返しをしないと生き残れない国家だと言い切る。つまり、中国という大国に翻弄され、やがて日本の統治下に置かれ、現在は米国とロシア、中国の影響下にあるという具合に、不安定な立場に置かれ続ける。

そしてもう一つ、韓国国内には「激しい地域対立」があるという。現在の北朝鮮は、古代「高句麗国」の後継であろう。韓国の東部(慶尚道)は古代「新羅国」、西部(全羅道)は古代「百済国」を継いでいるといえる。この慶尚道と全羅道で、激しい政治闘争が続いている。つまり、

  • 慶尚道=軍事保守政権=朴・全・ノテウ・パククネ大統領=北朝鮮へ北風政策=米国寄り
  • 全羅道=革新政権=金大中・ノムヒョン・現在の文大統領=北朝鮮へ太陽政策

という明確な構図ができている。

文大統領は、両親が北朝鮮出身者ということもあって南北統一に向けて前のめりになっている。場合によっては、米国・日本との同盟を見直し、中国に接近するかもしれない。

この本は、実に蘊蓄に富んだ良書である。こういった歯に衣着せぬ歴史物語を若い学生や、世界情勢に疎い大人に伝えてほしいと心から望む。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 ジミヘン 【発行周期】 週刊

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