【アベノミクスと株価】第3の矢を巡る強気論、弱気論を整理する

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『山崎和邦の投機の流儀』第136号(2015年01月11日号)

アベノミクスは「正念場」に差しかかる年である。新年早々、水を差すようなことを言って恐縮だが、今、水を差さねば後で頭から冷や水を浴びることになる。

「見せ場」─→「正念場」─→「修羅場」─→「土壇場」
or─→「見せ場の第2段の開幕」

見せ場の第1段は「3幕もの」だったが完全に終わった。

見せ場、1幕;12年11月から13年5月23日前場までの約7千円高の「青春期相場」、それから3千円下げて6月13日12,445円を以て幕引き。青春は精神のありようでいつでもあり得るが、青春期は2度はない。

第2幕;13年秋から年末の16,291円までの指数先導型の「後楽園ドーム型相場」(天井高く中身空洞)。

第3幕;10ヵ月のボックス圏の往来相場を経て14年10月31日にボックスを上放れて12月8日の18,030円で7年前のレベルに達した。

ここから千円の大台を2度かえて16,000円台まで新春に突っ込みを入れたことで第3幕の幕引きをし、「見せ場」から「正念場」に入った。

(A)弱気説
今からの「正念場」は第3の矢が発効する仕掛けを官僚や旧勢力とのバトルを乗り越えて実現させることだ。そこで安倍内閣が少しでもファイティング・ポーズを緩めたり曖昧にしたら市場は直ちに「土壇場」を指向する。その「土壇場」への準備はできている。簡潔に要約する。

1;日経平均
「マーシャルのk」から転用した筆者の50年間の指標。
東証時価総額÷個人現預金=30%前後→大底圏内
東証時価総額÷個人現預金=60%超→大天井圏内
この50年間に何回も60%超で大天井を付けた例があった。
(個人金資産における現預金864兆円)(2014年3月末、日銀)

X÷864兆円≧60%
この X を解けば
X=864兆円×0.6=518兆円
となる。

12月8日の18030円は518兆円だった。

2;NYダウ(日本株の直接最大のリスクはNYダウだ)
「W.バフェット指数」
NY時価総額÷米国GDP≧120%  →大天井圏内

NY時価総額;約19.5兆ドル
米国GDP;約16.5兆ドル
X÷16.5兆ドル≧1.20
X=1.20×16.5兆ドル=19.8兆ドル≒概ね現在時点

3;NYダウの罫線観
「Death of Equity」の終了後、NYダウの大相場は5回あった。今、5回目だ。
過去4回は 横軸(日柄)は4年~6年
縦軸(値幅)は2倍から2倍半

今、日柄は5年9ヵ月。値幅は約2倍半

但し日本株は下がっても下値は浅い(GPIF、個人投資家の待機資金MRF11兆円、日銀の働き)。

だが、こういうことは言える。

下にカンヌキが掛った市場は生体反応の一部を喪失していることになる。─→∴上値へのダイナミクスも限られる

(B)強気説
安倍内閣が修羅場を戦い取って第3の矢が発効予兆を見せれば、その予兆だけで市場は「第2段の見せ場」の開幕を告げる。そのための超強気説も用意されている。

1;ファンダメンタル
日経平均2万円(2000年20,434円)との比較

2000.4 2014.12.30
日経平均 2万434円 1万7450円
時価総額 452兆円
PER 83倍 17倍
PBR 2.4倍 1.4倍
ROE ▼1.3% 8.5%
円ドル 106円 120円
長期金利 1.79% 0.33%
NYダウ 10,305弗 18,000弗

2;成長PER(GPER)を適用する
円安125円レベル、原油55弗レベルなら経常利益は年率10%ずつ伸びる。

∴2年先にEPS=1,400円
1,400円×PER20倍=28,000円

3;アベノミクス第1段第1幕と同率の上昇を仮定する場合(初年度57%上昇)17,500円×1.57≒27,500円

1も2もいずれも約28,000円になる。

今年1月3日の日経新聞恒例の著名20氏のアンケートによれば20人中の17人が今年高値2万円か2万1千円としている。2万円を買う者が出なければ2万円は示現しない。2万円を買う者は2万8千円まで買ってしまう。

このような(A)説、(B)説のいずれかを決めるのは先週号で挙げた外部要因と共に、安倍内閣の修羅場のファイティング・ポーズとその成果である。

 

『山崎和邦の投機の流儀』第135号(2015年01月11日号)
著者:山崎和邦(大学教授/投資家)
野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て、武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年の現職の投資家。著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)など。メルマガ「週報『投機の流儀』」では最新の経済動向に合わせた先読みを掲載。
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