新型コロナの逆境に抗う、オリエンタルランドの収益力と資金力

 

臨時休園による業績への影響は?

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、今年2月下旬に、政府からのイベント等の自粛要請が出ました。これを受けて、オリエンタルランドも、2月29日から3月15日まで、東京ディズニーリゾートを臨時休園すると発表しました。

その後、3月上旬になっても事態の収束が見えず、政府から10日程度の自粛延長の要請が出ました。「西武園ゆうえんち」や「八景島シーパラダイス」などは、いったん営業を再開するなど、何とか失われた売上高を取り戻そうと躍起になっている中、オリエンタルランドは4月20日までの休園期間延長の決断を下しました。この結果、オリエンタルランドの3月の売上高が丸々1か月分吹き飛んでしまったのです。

臨時休園によって売上高は減ってしまいますが、これによって利益に対するインパクトはどうなるのでしょうか。損益分岐点分析を使って、オリエンタルランドの臨時休園の影響度を試算してみたいと思います。

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損益分岐点分析をするには、営業費用(売上原価+販売費及び一般管理費)を固定費と変動費に分ける必要があります。オリエンタルランドの固定費と変動費の割合は外部公表資料に載っていませんが、2019年3月期の有価証券報告書からおおよその割合が計算できます。

まず、売上原価については、売上原価明細書(単体ベース)をもとに計算すると、およそ44%が固定費、残り56%が変動費と推定できます。単体と連結では構成割合が異なりますが、オリエンタルランドの売上高連単倍率は1.2倍弱なので、単体の構成割合を連結にそのまま置き換えても、それほど大きな誤差は出ないものと考えられます。

そして、販売費及び一般管理費の内訳は、注記事項に主要項目しか載っていませんが、金額が最も大きい費目は人件費であり、それ以外も固定的な要素の費目が多いと考えられるため、簡便的にすべて固定費とみなして計算します。

この結果、オリエンタルランドの営業費用のうち、54%が固定費、46%が変動費という推算結果となりました。外部公表資料をもとにした、ざっくりとした試算ですが、大きく外れてはいないと思います。

このように、営業費用を固定費と変動費に分解すれば、売上高から変動費を差し引いた限界利益と、売上高に対する限界利益率の割合である限界利益率が算出できます。2019年3月期においては、オリエンタルランドの限界利益は3431億円、限界利益率は65.3%となります。

これを前提にすれば、オリエンタルランドの損益分岐点売上高は3276億円となります(固定費÷限界利益率で算出)。2019年3月期の売上実績が、5256億円なので、安全余裕率は37.7%(=(5256億円-3276億円)÷5256億円)ということが分かります。

安全余裕率37.7%とは、仮に売上高が37.7%減少したとしても黒字を維持できるということを意味しています。季節変動を考慮せず単純計算すれば、休園期間が4か月間(6月末まで)に及んでも、売上高は33.3%減なので黒字をキープできる計算となります。オリエンタルランドのように、安全余裕率が35%を超える会社はかなり優秀な部類に入り、今回のような非常事態においても事業を存続させることができる収益構造の会社と言えます。

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