新型コロナの逆境に抗う、オリエンタルランドの収益力と資金力

 

キャッシュ余力は大丈夫か?

それでは、オリエンタルランドのキャッシュ余力はどうでしょう。いくら利益がでても、キャッシュがなければ事業を存続させることはできません。

2019年3月期の連結財務諸表をもとに試算すると、固定費総額が年間2138億円程あり、このうち現金支出を伴わない固定費が382億円(減価償却費)です。これを前提に考えれば、オリエンタルランドの休園期間中の売上がゼロの場合、毎月の現金流出額は約146億円(=(2138億円-382億円)÷12ヶ月)と推定できます。

2019年12月末時点のオリエンタルランドのキャッシュ残高は、約3300億円もあります。単純計算すれば、約1年10カ月間(2021年10月頃まで)は、持ちこたえられるだけのキャッシュ余力があることを意味します。

振り返ってみれば、東京ディズニーリゾートが長期にわたって休園したのは、いまからさかのぼること9年前、2011年3月の東日本大震災の直後です。当時の休園期間は1ヶ月程度でしたが、復旧関連費用や商品廃棄損で44億円もの特別損失を計上しました。

しかし、今回の新型コロナウイルスによる休園は、前回のように物理的損害を発生させるものではありません。事態が収束すればほぼ無傷で再開することができます。再開すれば、これまでの自粛モードの反動で、来園者が急増することが予想されます。また、4月からのチケット値上げ効果も加わり、V字回復が大いに期待されます。

とは言え、新型コロナウイルスの収束時期が依然として見えないため、決して楽観視することはできません。一日でも早く本来の姿に戻り、また我々を「夢の国」へといざなって欲しいものです。

shutterstock_585089980

image by: Alina Zamogilnykh / shutterstock

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)

公認会計士
1975年栃木県生まれ。2000年より監査法人トーマツにて、主に上場企業の会計監査業務に従事。2006年、みずほ証券(旧・みずほインベスターズ証券)にて、新規上場における引受審査業務に従事する。2008年、これまでの経験を活かし、ITベンチャー企業の取締役兼CFOに就任。ベンチャーキャピタルからの資金調達、株式交換による企業買収などで成果を上げた。現在は会計コンサルタントとして、上場企業の決算支援業務や、各種研修・セミナーの講師等で活躍する。「監査法人・証券会社・ベンチャー企業・会計コンサル」。4つの視点で会計に携わった数少ない公認会計士。

著書『経営や会計のことはよく分かりませんが、儲かっている会社を教えてください!』(ダイヤモンド社)など多数。 
筆者ホームページ:https://kawaguchihiroyuki.com/
書籍リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/4478109060/

print
いま読まれてます

  • 新型コロナの逆境に抗う、オリエンタルランドの収益力と資金力
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け