顧客だけでなく従業員の幸せを優先する企業が成功をおさめた理由

 

先に上げた“この本”での、妙に納得したことについてですが、それというのは“京セラの理念”「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」の、なぜ「従業員の幸福」が前面に出ているのかということです。企業の成功は「顧客満足」があってで、これが焦点であるはずです。

GEの元CEOだったジャック・ウェルチは「従業員の雇用を保証するのは、唯一顧客だけだ」と言っています。ドラッカーも「企業の成功には5つの問い」の一番目に「われわれのミッション(使命)は何か」を掲げています。だから「人類、社会への貢献する」こそが最初に来るべきはずです。

ところがよくよく考えてみますと、ドラッガーの言う「ミッション」が「全従業員の物心両面の幸福」であって何の不都合もなく。顧客と直に接して、その満足を企業のフロント・ルーム(現場)で適えるのは他ならぬ従業員であり、すべてはここから発すからです。だから「全従業員の物心両面の幸福」から始まってオカシクないのです。

さらにこの本にこんなことが書かれています。「好業績と高い社員満足を両立している良い会社は、例外なくしっかりした“経営理念”を持ち、それを実践している」というものです。なぜこの本に着目するかというと、著者の大学教授が40年以上の歳月をかけて約8,000社の企業を実際に訪問して得た実感だからです。

ここでつくづく思ったのは、高業績の企業で「社員を幸福にしている」ところがあるんだというごく当たり前とも言える確信でした。それも「顧客を幸せする」という実践を通して、自己実現と成長をともにかなえて自己が磨かれて行くということです。経営者もまたこの“覚醒”こそが、満たされる条件となるでしょう。

経営者、社員という「金銭を媒体とする雇用関係」からではなくて、「価値観の共有という同志関係」によってのみ始めて形成される「知識と貢献意欲と協働意欲」が『本源的強み』を創り上げるでしょう。つまり資本主義(おカネの集合)だけでは不可能な、人本主義(価値観の連帯)こそが内外ともに幸福をもたらす源泉になるということです。

ここのところについて、松下幸之助さんはこう言います。「経営理念というものを持った結果、信念的に強固なものができてきた。なすべきことをなすという力強い経営ができるようになった」「経営に魂が入ったといってもいいような状況になったわけで。それからは、われながら驚くほどの事業は発展したのである」と。

“価値観”の核心は“同感する人たち”に共通の意義と意味を与え、「顧客・社会を幸福にする」という“目的”を使命感を持って達成することで、その“報酬”として「私たち(社内、関係会社、地域)が“物心両面”で幸福になる」というのは真っ当な納得できる道理です。「競争では強みは孤立」し「共創によってこそ強みが増殖」されます。

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