ほとんどの心霊写真がコレ。モノが顔に見えるシミュラクラ現象とは

 

【シミュラクラ】

なぜ私たち人間は、いろいろなモノに「顔」を見てしまうのでしょう。

白紙の上に、丸を三つ描いてみます。上に二つ、その下にひとつ、逆三角形になるように描けば、顔ができ上がります。正確には、「顔と見做すことのできるようなパタン」を描くことができる、と言うべきでしょう。

このように、人間がそうした簡単な要素の集合に顔を見てしまう傾向を「シミュラクラ(simulacra)現象(類像現象)」と呼びます。

私たちが「シミュラクラ現象」を起こしやすいのは、脳も含めた人間の「視覚系」に、顔を認識する「パタン認識のプログラム」が生まれつき組み込まれているからです。

人間だけではなく、ネコなども、線画で描いたネコの絵をネコとして認識することができるので、どうやら動物には、生まれつき、いくつかの「パタン認識の傾向」が組み込まれているようです。

そして、周囲の雑多な刺激が溢れる視覚環境の中に、いち早く「顔」を認識する能力を備えていることは、生存上とても有利です。ブッシュの葉陰に、猛獣などの顔を見つける能力は、危険を察知し生き延びる上で役に立つだけでなく、それは、仲間の顔を認識することにも役立ち、群を作り共生する際の社会性を支えるために必要なベイシックな能力でもあるのです。

現代では、こうした「シミュラクラ能力」が、省略され簡略化されて描かれるコミックやアニメのキャラクターを認識する能力としても役立っています。我々の文化は、人間における動物としての「天性」を土台として構築されているのです。

【火星の人面岩】

時代と共に、こうした「シミュラクラ現象」の対象は、宇宙にまで飛び出すようになりました。20世紀には、NASAが発表した火星表面の写真の中に、巨大な「人面像」が見つかったと話題になったことがあります。

それは、1976年7月、NASAの火星探査機「バイキング1号」が送って来た火星のシドニア地域を上空から撮った写真に写っていました。その岩は、長さ3km、幅1.5kmほどの大きさで、眼、鼻、口を備えた巨大な人の顔のように見えました。

周囲にピラミッドのような地形も複数あることから、これは「古代に火星で生活していた人々が造ったモニュメント」ではないかといった仮説が飛び交い、雑誌『ムー』などでは何度も「火星古代文明」の特集が組まれました。

しかしNASAは、「自然の岩山が、たまたまの光と影の具合で人の顔のように見えたもの」という見解を押し通しました。人工のものではなく、偶然の産物だと言うのです。

その後、2001年に発表されたNASAの「マーズ・グローバル・サーベイヤー」による高解像度の写真や地形図を見る限り、人工的に造られた顔の像とすることには無理があるように感じられます。もちろん、こうした新たな証拠に対しては、NASAが事実を「隠蔽」するために画像に手を加えたとする主張もあり、真実は「藪の中」なのかもしれません。

そして、さらにその後2006年にESA(ヨーロッパ宇宙機関)が発表した火星探査機「マーズエクスプレス」の撮影した鮮明で立体的な写真にも、シドニアの人面岩はいくつかの山や丘から成る自然な地形という感じで写っています。「顔」を取り囲む土手状の「額縁」が人工物っぽく見えるという疑問は残るものの、おそらく、自然に形成された岩石の地形であるとするNASAの見解は妥当なものであり、以前の不鮮明な写真が「シミュラクラ現象」を引き起こしたと考えても良いでしょう。

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