このままでは手遅れだ。米中激突の最前線となる日本の鈍重な対応

 

今こそしっかりと考え、迅速に動き出すべき日本

ちなみに、尖閣諸島は日本固有の領土との主張を行いつつ、これまで日本は中国船の侵入に対して効果的かつ決定的な対応ができないのが現在の懸念ですが、仮に、中国漁船の無断上陸を中国の海警が取り締まるという事態が起きたらどうするのでしょうか?これが上手にメディアで料理されてしまい、情報戦を国際的に仕掛けられたら、【尖閣は中国のもの】という誤解がデフォルト化する危険性がありますが、これを日本では想定しているのでしょうか?

南シナ海海域もここ数年、2つのブロックの衝突点となっています。ところで、米中会談後、中国の示威行為として、フィリピン近海に大量の中国漁船と海警の船舶が押し寄せたとの情報が入ってきていますが、これに米欧および中国と領海問題を争うフィリピンやベトナムの反応はどうでしょうか?

抗議は行ったようですが、もう単独では中国の強大な海軍力には対抗できないことも事実化しているので、目立った直接衝突は起きていません。今後、頼りになるのは、米インド太平洋軍ということになりますが、台湾を巡る直接対決が予想されている現状で、どこまで本気で力を注ぐでしょうか?

中国陣営も、アメリカ陣営も、ASEAN諸国の取り込みに躍起になっています。その表れとして、欧州各国が示威的に艦船を海域に投入するという決定がなされていますが、効果を発するには、本格的にアメリカのインド太平洋軍、インド軍、豪州軍などと連携して確固たるシーレーンを形成し、ASEANの利益の防衛に寄与しなくてはなりません。今、それが明確でないため、ASEAN各国は米中の間で揺れ動くという不安定な状況が続いています。

同盟の形成に手間取っているうちに、政治的・軍事的な機動力に勝る中国が一気に攻勢をかけたら…中国が一方的に主張する九段線も“デフォルト”化してしまうかもしれません。

そして、日本にも直接的な影響が及ぶのが、北朝鮮の核及びミサイル開発の進捗です。

今週も、アメリカの出方を見るためか、北朝鮮は弾道ミサイルと見られる飛翔体を数発発射するという危険なギャンブルに出ました。幸運なことに直接的な被害はなかったのですが、再び北東アジア情勢が緊迫してきました。

北朝鮮のギャンブルの背後には、間違いなく中ロの姿があります。ロケットや核開発を助けつつ、直接的な配備までは容認しないというのが方針だそうですが、配備の可能性があるという憶測を北朝鮮に強めさせるだけで、日本の安全保障上の緊迫感を高めることになり、それはすなわち、アメリカの北東アジア戦略に直結することとなります。

そこには、東シナ海、南シナ海、台湾、そして北朝鮮絡みと、地域における対峙ポイントを複数化することで、アメリカの戦力が中国本土に向くのを避けようとする中国とロシアの狙いが見えます。

38度線が有名無実化し、韓国が中国サイドに堕ちたとみられる中、実は2つの大きなブロックの対峙ポイントが日本になっていることにお気づきでしょうか。

そのような中で、「日米同盟は外交の基軸」と明言しながら、まだ態度を明らかにせず、米中両にらみの対応を続けています。

ゆえに、新疆ウイグル地区の人権問題に対しても、ミャンマー情勢に対しても、どうも中途半端な、どっちつかずの対応になってしまっている気がします。そして確実にプレゼンスは発揮できていません。

そういう特殊な外交方針、身の処し方もあるかとは思いますが、世界の覇権ブロックの最先端に位置することになる日本として、本当にどのように対応するべきなのか。今こそしっかりと考え、迅速に動き出すべきだと思います。

皆さんは、どうお考えになりますか?

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

image by: Twitter(@President Biden

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

有料メルマガ好評配信中

    

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』 』

【著者】 島田久仁彦(国際交渉人) 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • このままでは手遅れだ。米中激突の最前線となる日本の鈍重な対応
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け