このままでは手遅れだ。米中激突の最前線となる日本の鈍重な対応

 

中国の人権問題を批判せぬ国々の思惑

では、どのようなイシューがあるでしょうか?網羅することはできませんが、いくつか私の関心に沿って、両ブロック間での対立構造を見てみたいと思います。

一つ目は、人権にまつわるポイントです。

特に新疆ウイグルにおけるトルコ系ウイグル人に対する扱いを巡る衝突です。中国化するために教育施設(収容施設)に入れて洗脳したり、従わないものを虐殺したり、さらには親子を引き離して精神的な苦痛を与えることで、思想教育を強要したり…挙げるときりがないほど、多くの凶行が報じられています。

今週に入り、欧州諸国も対中国制裁の発動に乗り出したことで、ついに欧米諸国の足並みが揃ったと言えます。

その背景には、バイデン政権に変わり、人権擁護・重視というアメリカ外交の原理原則を、トランプ政権との違いとして打ち出すがために、一歩も退けないアメリカの現実と、度重なる対中批判をことごとく無視され、中国に馬鹿にされてプライドをズタズタにされて怒る欧州が手を組んだのが今週の大きな動きです。

これに対して、中国も報復制裁を課していますが、同時にこれまでの主張を繰り返し、新疆ウイグル地区への他国からの干渉は、明らかな内政干渉にあたり、決して受け入れられないとの姿勢を強調しています。

「欧米諸国はいつもこうして自分たちの価値観を絶対として他国に押し付ける。中国は、アジアは、決して欧米諸国から人権について押し付けられる筋合いはなく、許せない」というOne Asia構想をここでちらつかせたりもします。

ここに「国内での人権問題を指摘されている国々」が追従します。サウジアラビア王国をはじめとする中東諸国、カンボジア、ベネズエラ、そしてロシアがその例です。

これらの国の友人たちの言葉を借りると、「新疆ウイグル地区で行われている事態については、懸念を有するが、同時に、中国への批判は、その批判の矛先が自分たちに向いてくることを意味し、政府としては許容できない」とのこと。

ロシアではウクライナ、北オセチア、チェチェン共和国、ジョージア…などの問題があり、また昨今のナワリヌイ氏を巡る問題も、あまり他国から触られたくはない問題が山積しています。

サウジアラビア王国を筆頭に、非常に厳格なイスラム教国では、最近、目くらませで女性の運転を許したり、社会進出をアピールしたりしていますが、いまでも女性に対する公開処刑が実行されており、深刻な人権問題が存在しますが、それを国際的に非難されることは避けたいため、中国も非難しないという流れが出来上がっています。

ベネズエラでは、チャベス大統領時代から、有力な反対派市民の誘拐事件が多発していますし、アルゼンチンでも同様の問題が社会問題化していますが、それを海外から非難されるのを嫌い、中国という隠れ蓑を使っています。

比較的穏健な形では、インドネシアなどの独裁国では、国内に存在する諸々の問題を覆い隠すため、ASEANに適用される内政不干渉の原則を盾にしています。

今、この人権問題を巡って、2大ブロックのせめぎあいが行われているのが、国際舞台です。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • このままでは手遅れだ。米中激突の最前線となる日本の鈍重な対応
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け