このままでは手遅れだ。米中激突の最前線となる日本の鈍重な対応

 

6年以内に中国政府が台湾を武力攻撃か

2つ目のフロントは、台湾・香港問題です。

これも人権問題に含めることもできますが、中国の習近平国家主席にとっては、その威厳を示し、長年の中国の夢である大中華帝国の再興のために、英国から取り戻した香港と、“不可分の同胞”と見做される台湾を手に入れることは宿願となっています。

そのために、昨年の香港国家安全維持法の迅速な制定と施行が行われ、今月に開催された全人代では、実質的に香港の自治と民主主義を奪い去りました。

本件についても、ロシアなどは「あくまでも中国国内の問題であり、他国があれこれ口を出すべきではない」との姿勢を貫き、中国の強硬姿勢を後押ししているように思えます。それは中東諸国の言行でも同じです。

欧米諸国の香港問題への反応は、もう繰り返す必要もないくらい批判的で、中国政府と真っ向から対立していますが、その背景には、「ビジネスや金融がやりづらくなった」という実利的な理由と、”勝手に”描いた「香港を通じた中国の民主化」という夢が叶わないことに気付いたという理由が存在します。

もう香港の中国化の動きは止めることが非常に困難な事態になっていますが、かつての宗主国である英国は、それを看過するつもりはないという姿勢を明確にしています。

今年に入り、英国の防衛方針が改正され、中国を仮想敵国に設定して、アジア地域へのコミットメントを再強化し、加えて核兵器の拡張に乗り出すことにした英国・ジョンソン政権(ジョンソン氏はロンドン市長時代に、中国の軍備拡張と香港防衛を想定した核対抗論を述べていた)の姿勢は目を見張るものがあります。

空母クリーン・エリザベスをアジアに配置し、米英共同運用を行うというかなり踏み込んだ軍事協力を通じ、中国の武力による勢力の伸長を防ごうとしています。

英国による核戦力の増強は、私は支持できませんが、それほど中国の武力と脅威を英国が感じている印とも言えます。

そこに、香港問題がほぼチェックメイトになる寸前である状況に加え、台湾を巡る衝突の危機が顕在化してきています。

ペンタゴンの分析によると、6年以内に中国政府が台湾を武力攻撃する可能性が高いと見ているようで、もし戦争が不可避であれば、中国の全体的な戦力がアメリカを凌駕するとされる2028年までに叩く必要があるとの分析が出されました。

ところで、直接対立が不可避となった場合、米国はどこまで対抗するのでしょうか?

米国領(グアム・サイパン)に直接的な影響がなければ手を出さないのか?駐アジア米軍基地もアメリカの領域と見なし、いかなる攻撃もアメリカへの攻撃として捉えて対抗するのか?そもそも、中国本土への攻撃はあるのか?

こういった問題が浮かび上がってきます。

さらには、単独での対抗になるか?それともバイデン政権で強調される“何でも同盟国と足並みをそろえた”対抗か?

そのスタイルにも諸説あります。

それを見ていく際、具体的な例になりそうなのが、東シナ海(尖閣諸島問題)です。

バイデン政権下で、【尖閣諸島エリアは日米安保条約第5条の適用範囲との認識】が示され、中国海警法による海警の第2海軍化に伴い、周辺海域の緊張が高まり、インド太平洋地域全体への影響の波及も懸念される状態になってきています。

もし、中国が尖閣諸島を武力で侵略してきた場合、どのように対応するのでしょうか?その時、自衛隊の対応はどうなるのでしょうか?そして、米軍はどの程度の規模で対抗するのでしょうか?

現時点で、どこまでクリアになっているのかは分かりませんが、確実に二つの大きなブロックが衝突するポイントになるでしょう。

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