独力では解決できない悩みや問題に遭遇した際、ひとつの助けとなるのが「人生の大先輩」の言葉。それがさまざまな困難を乗り越えてきた方のものとあれば、説得力も一入と言えるのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、京セラの創業者として、またJALの再建者としてその名を知られる稲盛和夫氏が、聴衆の前で語った「生きる目的」を紹介。経営の神様が強調したのは、「利他の心」の大切さでした。
利他
京セラやKDDIを創業し、それぞれ1.5兆円、4.9兆円を超える大企業に育て上げ、経営破綻したJALを僅か2年8か月で再上場へと導いた稲盛和夫さん。
まさに人生を経営に懸けてきた稲盛さんが「人は何のために生きるのか」をテーマに、致知出版社主催の講演会で語られた貴重なお話を抜粋してお届けします。
皆さんの中で仏教を信じていらっしゃる方は多いと思います。お釈迦様は、生きていく人間にとって一番大事なことは利他の心であると説きました。お釈迦様の心の神髄とは、慈悲の心です。思いやりを持った慈しみの心、それがお釈迦様の心の神髄であります。
この心は、他のものを少しでも助けてあげよう、よくしてあげようと思う心です。そうした心を持って生きていくことこそが人生の目的なのではないか。つまり、利他の行為を行うことが、人間にとって、まず一番に大事なことだと思うのです。
この利他の心の対極にあるのは、利己の心です。自分だけよければいい、という心です。このような利己の心を離れて、利他の心で人様をよくしてあげようという心で人生を生きていく。それが生きる目的だと私は思っているのですが、実は、これは口で言うほど簡単ではありません。
利他の心を持って人様に美しい思いやりの心で接しようという考えで人生を生きていこうと思えば、まず、現在生きていることに感謝をするという心が起こってこなければいけません。次に、そのような感謝の心が芽生えてきますと、自然と自分自身がどんな環境にあっても幸せだと思える心になっていくはずです。
「いや、私は決して幸せではありません。大変不幸な人生を生きています」
とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、この世の中を見渡せば、そういう方よりももっと不幸な境遇の人もたくさんおられるはずです。そう考えれば、親兄弟が一緒にいられるだけでも幸せではないかという感謝の念が湧いてくるはずです。
つまり、どんな境遇であれ、心のあり方によって幸せはそれぞれに感じられるものなのです。そう感じるようになるためにも、まず最初に、現在こうして生きているだけでも幸せだという感謝の念が起こってくることが大事なのです。
そのようにして自分が幸せだと思えるようになってきますと、その次には当然、他の人にも親切にしてあげたいという思いやりの心が生まれてくると思います。またそういう心が起こってこなければいけないのです。
したがって、利他の心を持つためには、まず自分が生きていることへの感謝の心を持たなくてはならないというわけなのです。
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