2021年、全人類は「異世界」に転移しました。コロナ五輪の次は何が待ち受ける?

 

3.世界をまとめる求心力の消失

なぜ、世界は求心力を失ったのか。それには、求心力とは何か、を考えなくてはならない。

例えば、国の求心力とは何か。通常、人は生れた国が祖国となる。国には法律があり、国民には権利と義務がある。

人は生れた瞬間、親子の関係が生じる。子供が生れる前提として結婚制度があり、他人が家族となる。

親は子供が自立するまで養育し、教育する。

学校という教育機関も国としての求心力を高める存在だ。各国が独自の歴史、文化、芸術、政治等を教育し、国民としての自覚を高めていく。

学校を卒業すると、一般的には就職し、会社で仕事を行う。もちろん、起業して仕事を始めることもある。

仕事をして、報酬を得て、生活を維持する。そして、納税することで、国や自治体が運営される。

これらをまとめると、ルールとお金、そして関係性に集約されるのでないか。

ルールは、組織ごとに設定される。国には国のルールがあり、会社には会社のルールがある。しかし、自由に国籍を他国に移したり、組織に縛られない働き方が増えるにつれ、ルールに縛られない人が増えてくる。集団で仕事や生活をするのではなく、個別に生活を選ぶ。もちろん、集団としての関係性は希薄になる。

地理や時間に縛られない生活ができるようになったのは、インターネットなどのデジタルテクノロジーのお蔭だ。

ネット上で仕事をして、ネット上で遊ぶ。個人の生活がネットに依存するにつれ、国や組織のルールより、ネットのルールが重要になった。

仮想通貨、ネットバンキング、ネット上の投資や取引が増えるにつれ、現金を使うこともなくなり、お金はデジタルデータとして認識される。お金は情報なのだ。

また、テレビや新聞というメディアは国や地域に依存している。そして、政治も国や地域に依存している。それらが、インターネットにより揺らいでくる。

情報収集の手段がSNSに移ることで、国やマスコミが情報をコントロールできなくなる。そして、多くの情報がリークされ、秘密が暴かれるようになると、これまでの政治手法は使えなくなる。もちろん、政党という組織も揺らいでいる。

4.AIによるマネー取引

関係性もルールもお金も、全てはネットでデジタルデータとして扱われるようになる。ネットの世界では、国家よりもビッグテックのルールが優先される。また、ビッグテックは、世界中の人々から、少額の費用を満遍なく徴収する仕組みを作り上げた。これまでは、国家しかできなかった徴税以上の仕組みを、民間企業のビッグテックが構築してしまったのだ。当然、国家以上の財力を持つようにな
るだろう。

個人は直接ネットとつながり、リアルな世界である国家、地域、家族、学校、会社等の組織のルールと関係性が希薄になっていった。

当然、リアルな世界の組織は弱体化していく。例えば、ある日突然、組織のスキャンダルが世間に知られることになり、一気に信用を失ってしまう。あるいは、磐石に見えた組織力が脆弱になり、組織が崩壊してしまう。

リアルマネーが姿を消し、デジタルマネー普及することも、国家や銀行という権威の弱体化につながっていく。

更に、税金による歳入より、国債による貨幣流通が増える。そして、物販やサービスに使われるリアルなお金より、投資に回るお金が増える。更に、法律を守らないブラックなマネーがマネーロンダリングされ、一般の金融市場に流入すれば、リアルなビジネスを圧迫していくごだろう。

最早、お金を稼ぐ最も効率の良い方法は、お金そのものの売買である。そして、金融市場の売買にAIが投入され、秒以下の単位で取引されるようになっている。

ここで扱われるお金は、我々の生活で使っているお金と同じものなのだろうか。仕事をして、支払われる報酬の数億倍の金額をAIが一瞬で稼ぎだす世界。こうなると、デジタルテクノロジーがお金を支配するようになるだろう。最終的には、一人の勝者が全てのお金を支配するかもしれない。

そんな時代になったら、人はどんなに努力してもお金を稼ぐことはできなくなる。それでは、社会というゲームは成立しない。

現在の状況は、世界そのものが成立するかしないかの瀬戸際である。全ての要素は不確実であり、何が起きるか分からない。もし、中国の不良債権が一気に表面化すれば、世界の金融は突然崩壊するかもしれない。

そうなったら、グローバリズムを捨てて、アナログに戻って、国単位で生きていくのだろうか。トランプ前大統領は、こちらの道を選択していたと思う。

それとも、デジタルを基本にした新しい世界秩序を作り、一つの世界国家による新体制を創造するのだろうか。ダボス会議は、こちらの道を提唱しているようだ。

どちらの選択肢を選んでも、異世界である。我々はこれからその異世界を経験するのか。それとも、既に異世界に転移しているのだろうか。

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