数百基のサイロにDF-41を配備する目的については、さまざまな推測が成り立つ。米国はピースキーパーICBMの配備方式として、200発を1000基以上のサイロの間で移動させることで、ソ連による先制攻撃を抑止しようとしたが、中国も同じ考えでサイロを増やしているのかもしれない(米国はこの配備方式を受け入れる州がなかったため、既存のサイロに固定配備した)。
あるいは、有事に米軍が自らの脅威となる中国軍の通常弾頭ミサイルを攻撃する目的で移動式発射機を攻撃した場合に、核ミサイルも破壊される可能性への備えかもしれない。
明らかなのは、中国が保有している核兵器物質では、現在の米国・ロシアの規模に核戦力を拡大することはできないということだ。民間の国際核分裂性物質パネルによると、中国は兵器級プルトニウムの生産を1986年、高濃縮ウランの生産を87年に中止しており、既存の核兵器を含めて兵器級プルトニウム約2.9トン、高濃縮ウラン約14トンを保有しているという。
中国の核兵器が起爆にプルトニウム4キロ、最終段階の核分裂に高濃縮ウラン20キロを使用するなら、中国が保有できる核兵器の数はプルトニウムの保有量に制限され、約730発となる。中国がかつて運転した兵器級プルトニウム生産炉は2基とも廃炉が進んでおり、新設する動きはみられない。
したがって、中国が核戦力を現在の米国・ロシアの規模に拡大する可能性はないと考えてよいだろう。(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)
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