役立たず覇権国アメリカ。軍事力信仰という病に冒されたバイデンの時代錯誤

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先日掲載の「トランプと同レベル。バイデン『米国ファースト外交』の迷惑千万」でもお伝えしたとおり、自国軍のアフガン撤退をはじめ、失敗ばかりが目についてしまうバイデン大統領の外交政策。その中にあって最も重要と目される対中関係においても、現在のところ「迷走」ぶりが否めない状況となっていますが、アメリカがこの先進むべきはどの道なのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、アメリカ外交界の重鎮がニューヨーク・タイムズに発表した論説を引きつつ、そこから読み取れるバイデン氏への「忠告」を解説。さらに米国が主張するところの「中国の軍事的脅威」を、排除の論理を用いることなく解決する方法を提示しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年11月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

米国は対中国の「3次元ゲーム」に習熟せよというジョゼフ・ナイ教授の勧告/不器用なバイデンにそれが出来るのか?

米バイデン政権が中国の台頭に対処するについて、「軍事は対決、経済は競合、気候変動は協力の3層を使い分ける」かのようなことを言っているけれども、そんな器用なことは誰だってできるはすがないというのが私の説である(No.1118=21年9月27日号 「何をやってもドタバタで失敗続きのバイデン外交」)。

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ところが、ワシントンの民主党系外交安保政策マフィアの重鎮であるジョゼフ・ナイ=ハーバード大学教授は、その3次元ゲームを何とかしてこなすのでなければ、米国はかつての冷戦時代のような敵か味方かの2次元ゲームに陥って失敗すると警告する。

「冷戦思考」に陥るな

ニューヨーク・タイムズ11月4日付に載った「中国への対応を『冷戦』呼ばわりするな」と題した論説の要旨は次の通り。

▼最近、政治家や政策立案者の間で、米国は中国との「冷戦」の最中にあるという考えが広まっているが、これは間違った考えである。バイデン政権は賢明にもそのような認識を退けてきた。しかし大統領の実際の行動を見ると、彼の対中戦略はまさに冷戦思考に冒されているかのようで、これでは我々の精神は伝統的な2次元ゲームのモデルに縛り付けられてしまう。

▼しかし、中国との競争は3次元ゲームであり、そこで米国が2次元ゲームを続けていれば、負けるに決まっている。

▼経済の面では、米中は深く相互依存しており、2020年の貿易額は5,000億ドルを超えた。米中の「デカップリング」を唱える者がいるが米国が巨額のコストを支払わずにそんなことができると考えるのは馬鹿げている。

▼それにも関わらず、2次元的な考えの人は、米国はその軍事的な優越性ゆえに中国に立ち向かうことが出来ると思い込んでいる。米国は依然として唯一の真のグローバル・パワーであるが、それ故にアジアにおける通常戦力のパワー・バランスを慎重に維持しなければならない。同時に、軍事力の次元と経済的次元および超国家的次元との相互関係を無視してはならない。

▼経済の面ではパワーの配分は多極的で、米中欧日が主要なプレーヤーとなる。気候変動とかパンデミックとかの超国家的な次元の課題は、一国では何も解決できないし、また非政府組織が強力な役割を持つ。米中関係がまずくなることは気候変動問題の目標達成を危うくする。中国の王毅外相が言ったように「他の関係全般が砂漠のような状態だというのに、気候変動交渉だけをオアシスとして扱えるなどと期待しないほうがいい」。

▼バイデン大統領が冷戦レトリックに否定的であるのは正しいが、対中国戦略を3次元ゲームに適合させることが必要である……。

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