焦る習近平。ウクライナ戦争が「中国包囲網」の強化を加速させる

 

一方、ウクライナの次には中国が台湾を侵略するのではないかという国際的懸念に対し、中国は、「ウクライナは独立国、台湾は『中国の一部』であるから、状況は全く違う」と反論しています。つまり、ロシア軍のウクライナ侵攻は国と国との戦争だが、台湾への武力侵攻は戦争ではなく、国内の治安維持だというロジックです。

ただし、もしも中国が台湾に侵攻すれば、台湾政府は独立を宣言するでしょうし、それを西側諸国が承認すれば、やはり国対国の戦争ということになります。今回のロシア侵攻も、ウクライナの一部の州の独立をロシアが承認し、その新国家と「友好協力相互支援協定」を結び、求めに応じて平和維持軍を派遣したという形にしています。

台湾有事でも、台湾が独立を宣言することで、台湾は正式な「国家」となります。しかも現実として、台湾は長年、独自の選挙を行い独自の経済や政治システムを維持・発展させてきました。ロシアの後ろ盾で「形だけ」独立を宣言したウクライナのドネツク州やルハンスク州に比べて、よほど台湾のほうが民族自決を実現しており、「国家」としての要件を満たしていることは明らかです。

ここに、ウクライナ問題に対して中国が、完全にロシア側に立ちづらい背景があります。ドネツクやルハンスクを独立させた手法を認めてしまえば、台湾に独立の正当性を与えてしまいかねないからです。

中国では3月5日から全国人民代表大会が開催されていますが、李克強首相による政府活動報告で「台湾統一」への決意を重ねて表明し、さらに国防費を前年比7.1%増に拡大させることを発表しました。経済成長率の目標が前年の8.1%から5.5%に大きく落ち込む一方、国防費は前年の伸び率6.8%を上回ったことで、経済が低迷したとしても、軍事的覇権主義を加速させようという意図は明らかです。

中国、国防費7.1%増で伸び拡大 台湾統一へ軍備増強

今年秋の共産党大会で習近平は最高指導者として3期目選出を目指しています。これまでのメルマガでも述べてきたように、その3期目を終える5年後までに、次の4期目を狙って台湾統一を加速させるのではないかという観測が、西側諸国の軍事専門家の間でも広がっています。これは逆にいえば、この5年以内に、台湾が独立を宣言する可能性も高まっているということです。

それを牽制するかのように、全人代では台湾に対する外部干渉に反対しました。同時に、アメリカに対しては太平洋版のNATOを構築しないようにも要求しています。今回のウクライナ問題が、中国包囲網構築を加速させるかもしれないという危機意識の表れでもあります。

中国、成長目標「5.5%前後」 全人代開幕「外部勢力の台湾干渉に反対」
中国、太平洋版NATO構築しないよう米国に警告-台湾支援もけん制

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