岸田政権が打ち切れぬ、安倍氏がプーチンに媚びを売って行なった“事業”

 

「国際社会がノーといっている時に、なにが経済協力だ」などと野党に追及された岸田首相は「修正は考えていない」と答え、その理由について「参加した日本企業がどう対応すべきかの情報提供をする予算が含まれている」と述べたが、苦しい弁明には違いない。

たとえ22年度予算については、そのようなゴマカシが通用するとしても、ロシアの信用が失われた以上、今後、全体計画を進めていくわけにはいかないのではないか。

安倍元首相がプーチン大統領のご機嫌をとるために行った事業は、これだけではない。

北極海のヤマロ・ネネツ自治管区ギダン半島でLNG生産を行う「ヤマルプロジェクト」は50.1%の株を持つノヴァテク(ロシア)と、中国、フランス企業の合弁だが、クリミア問題で欧米諸国が撤退し、プラント建設や資金調達に困ったため、安倍元首相が救援を買って出た。官邸の働きかけで日揮や千代田化工がプラント建設に参入。国際協力銀行が巨額融資を行った。

同半島で23年からLNG生産が開始される「アークティックLNG2」事業にも、三井物産や経産省所管の独立行政法人が参画している。

これら北極海プロジェクトは、欧州向けにはよくとも、日本からはあまりに遠く、プーチン大統領の口車に乗った感が強い。日本政府は、ロシアへの制裁を求める国際世論に従って事業から手を引くかどうかの判断を迫られている。

1990年代から進むサハリンの原油・天然ガス開発「サハリン1」「サハリン2」の場合は、政府が「日本のエネルギー安全保障上、重要なプロジェクト」と位置づけているだけに、より深刻だ。

すでに米エクソンモービルが「サハリン1」から、英蘭シェルが「サハリン2」から撤退すると発表している。

「サハリン1」は、エクソンモービルが30%、経産省・伊藤忠・丸紅などの「サハリン石油ガス開発」も30%、ロシアのロスネフチとインドが各20%の権益を持っていたが、エクソンモービルの持ち株がロシアに没収されれば、経営権はほぼロシアのものとなる。

「サハリン2」は、ロシアが環境問題を持ち出してイチャモンをつけ2007年に日本側企業と英蘭シェルから経営権を奪い取った。その結果、出資比率はロシアのガスプロムが50%プラス1株、シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%になっていた。英蘭シェルの撤退で、その株式をロシアが没収すれば、日本勢の権益は無いに等しい。

つまり、「サハリン1」「サハリン2」ともに、将来にわたって原油・天然ガスの安定供給をもたらすかどうか危ぶまれる存在となっているのである。

国際世論に従うなら、いずれのプロジェクトからも撤退すべきところだが、安倍元首相に忖度しているせいか、いまのところ岸田政権にその気はないようだ。

萩生田経産相は、3月4日の記者会見で「サハリン1は、エネルギーの安定供給上、重要なプロジェクトだ。エクソンモービルの撤退表明による影響については、情報収集のうえ精査していく」と語っている。

日本は、輸入原油の約6%、輸入天然ガスの約9%をロシアから輸入している。北極海やサハリンの資源事業から撤退すると、中東への依存率がさらに高まるだろうし、日本企業の損失も甚大だ。

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