ウクライナ戦争の「仲裁役」は誰?各国の調停官が挙げる意外な国名

 

例えば、【北朝鮮の核問題を話し合う6か国会議】については、日米韓北朝鮮中国ロシアと“北朝鮮の周辺国”が集う会議なので、直接的な利害関係があり構図が分かりやすいのですが、同じ“北朝鮮”問題でも、【北朝鮮の核問題や人権問題を話し合うストックホルム会議】の構成についてはちょっと複雑怪奇です。

こちらは国連安全保障理事会の常任理事国5か国に、なぜかドイツが加わり、そしてスウェーデンがホスト国として参加しています。そして北朝鮮も、ストックホルムに大使館があり、欧州をカバーしているので、必ず誰かが出席します。

核問題に加えて、人権問題を話し合う場でもあるので、北朝鮮との間に拉致被害者問題を抱える日本が当然加わっているはずですが、そこになぜか日本の参加者の顔を見ません。最近は北朝鮮の姿勢の硬化やコロナ禍、そしてウクライナの問題の影響もあり、会議の開催が見送られているということですが、参加構成国の面子を見た時に、不思議な感覚にはならないでしょうか?

他には、よくニュースを賑わす【イランの核合意に関する協議】も同様です。イランの核開発への懸念から集い、イランが兵器転用レベルにまでウランを濃縮しないことを条件に、イランへの制裁を緩和しイランへの投資を行うという趣旨の協議ですが、トランプ大統領によってアメリカは離脱しました。この構成も、アメリカ、英国、フランス、中国、ロシア、イランの6か国と思いきや、ここにもしっかりドイツが食い込んでいます(ドイツの外交力のすごさが分かります)。

ちなみにこの協議の背後には、当たり前のようにイスラエルの影がちらつきますし、サウジアラビア王国をはじめとするアラブの周辺国の影もちらつきますが、そもそもの会合の理由となるセッティングが一方的な視点に立っていないでしょうか?

【イランが核兵器を持つことへの脅威】が背景にありますが、それは誰にとっての脅威なのでしょうか?イスラエルやアラブ諸国ならばわかるのですが、議論に参加し合意を形成するのは安保理常任理事国とドイツ、そしてイランとなっています。

ちなみに【イランにとっての脅威、特にイスラエルの核兵器に対する脅威】というアングルは考慮されているでしょうか?

恐らくされておらず、イランを責め立てる一方的な設えだと思われます。それゆえかどうかは、皆さんの判断に委ねますが、この協議、うまく行っているでしょうか?

そして、最近の例では【イラク・アフガニスタンの復興会議】も興味深い設定です。

アフガニスタン復興会議は、日本政府が音頭を取り、主導的に支援の枠組みを作ったと高い評価を受けていますが、この会議には各国政府や国際機関がみんな相乗りという構図が出来、一時は新しい復興支援の形としてもてはやされました。

しかし、戦争と同じく、各国の熱狂はそう長くは続かず、最後のほうは議長国の日本の支援や世界銀行などの国際開発金融機関からの支援が続くものの、活動は先細りしていたのが実態です。これが明らかになったのが、中村哲医師が何者かに銃撃されてお亡くなりになったのを機に、いかにアフガニスタンに支援が届いていないのかが分かったことでしょう。

直接的な利害が生じない国や地域への支援は、資金や人材、そして政策という観点で、なかなか継続しづらいのが実情です。しかし、金を出すからには口も出すし、自国が出したお金の使途は自国で決めるといった性格が強くなってくると、実質的な戦後復興支援は成立しなくなります。

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