ウクライナ戦争の「仲裁役」は誰?各国の調停官が挙げる意外な国名

 

そこで、調停官という立場を離れて、日本人として質問してみました。

島田 「ところで今回の日本政府の対応について、トルコ政府はどう見ているのか?」

トルコ 「思い切った決断をしたとみている。日本政府の外交の一つの大きな分岐点だろう。ただし、今回、はっきりとG7に寄り添い、欧米諸国の対応に寄り添ったことで、これまで日本の財産とも考えられてきた“どっちつかずの外交によってバランスを取る”という独特の立ち位置は失われた。それは、ロシアはもちろん、中国や朝鮮半島にも明確に伝わったと思われる。覚悟を持った方針転換だと信じているが、新しい現実に対応しなくてはいけなくなったことを理解しないといけないだろう」

ということでした。

ところでここで中国の名前が出てきたので、再度、調停グループの話題に戻ります。

多国籍の調停官が集うグループなのですが、そこで、ウクライナでの紛争に対する調停・仲裁役に適していると思われる国の一つに中国を挙げるメンバーが多くいました。

「100%完ぺきなチョイスとは言えないが、ロシアも受け入れ可能で、比較的ウクライナのゼレンスキー大統領も抵抗がないのが、意外なことに中国だ。中国は、ウクライナ市場における自国のシェアを失うことを嫌っており、一日も早い収束と安定化を望んでいる。同時にロシアに対して厳しい意見も言うことが出来、プーチン大統領とその周辺に妥協案を提示しやすい立ち位置にある」

「問題があるとしたら、欧米諸国だろう。これはあくまでもロシアとウクライナの問題とゼレンスキー大統領が言い切ることが出来るのであれば、中国も受けやすくなるかもしれないが、すでにNATOを通じて多種多様な武器弾薬をウクライナに提供していることをテコに、必ずゼレンスキー大統領にいろいろとモノを言ってきて、結局、いつの間にか当事者になりたがる。そうなると中国は、特に秋に5年に一度の共産党大会を控え、習近平国家主席にとってはそれまで穏便に過ごしたい時期に、国際案件に引きずり込まれることを嫌うだろうから、距離を置くことになるだろう」

「再三、アメリカのバイデン政権が中国にアプローチしているのは、中国を引きずり込み、ロシアへの影響力を発揮させたいとの狙いがあるからだろうが、中国政府はその意図を読み取っており、その手には乗ってこない。特にアメリカ政府特有の上から目線の物言いでは、絶対に中国は乗ってこない」

「これを変えるには、(以前、1.のコーナーで『中国流交渉術』でもお話ししたように)中国の顔を立てる形式を明確にする必要がある。それはロシアとウクライナ双方から中国に依頼し、欧米諸国は一切口を挟まないことだ」

こちらでもいろいろな意見が出ましたが、それでも【中国は今回の案件については、調停役にふさわしいと考えられる数少ない候補】という見解では一致しました。

早くても今秋の共産党大会が終わるまでは、なかなか中国のコミットメントを引き出すのは難しいと思われますが…。

今回の臨時会合ではいろいろな議論ができましたが、最後にもう一点、シェアします。

それは、先ほども触れた【戦後復興】や【ある国の問題への懸念を解消するための会議に誰が参加し、誰が主導すべきか】という内容です。

調停グループのメンバーは、これまで様々な立場でそのような機会に携わってきましたが、総じて考えているジレンマや疑問があります。

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