世界中がエネルギー不足に襲われるなか、中国がしのげている理由

 

こうしたことを前提に、今週は二つの世界の動きを振り返ってみたい。一つはジョー・バイデン大統領の中東訪問。もう一つはG20財務相会議である。二つに共通しているのは、エネルギー価格の高騰やインフレへの対処を目的としていたものの、いずれも不発に終わったことだ。

G20を扱ったロイター通信の記事(2022年7月13日)は典型的だ。そのタイトルは「G20財務相会議が15日開幕、インフレなど議論 共同声明困難か」とあり、団結よりも不協和音に焦点が当てられていることがわかる。

そもそもロシアの代表をめぐって対応が二分されていたのだから、協力して共通の課題に取り組むという以前の話だったのかもしれない。

エネルギー価格の高騰への対応という意味では、バイデン大統領の中東訪問は一つの突破口となることが期待された。

だが、実情は入り口のサウジアラビア訪問から苦しい会談となったようだ。『日本経済新聞』(2022年7月13日)は、「サウジと関係改善なるか? バイデン氏、13日に中東訪問」というタイトル記事で、「ウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁で原油供給が細り、最も多くの余剰生産能力を持つサウジにロシア産の代替を頼まざるを得なくなった」とアメリカの苦しい立場を解説していた。

サウジアラビアに石油の増産を頼まなければならないのに、人権問題では厳しい対応をしなければならないのだ。

案の定、ムハンマド皇太子は15日のバイデン米大統領との会談でバイデン氏がムハンマド氏主導と見るサウジ人記者殺害事件(2018年)を取り上げたことに強く反発した。『毎日新聞』(7月16日)によると、「『このような事件は世界のどこでも起きうる』と主張。米国も過ちを犯してきたとして、駐留米軍による被収容者虐待事件が起きたイラクのアブグレイブ刑務所を例に挙げた」という。

同じようにイスラエルとの関係改善への一歩というアメリカや欧米メディアの見立てを直ちに同国外相が打ち消すという反応も見られ、交渉が難航したことを予感させた。

厳しい対ロ制裁で足並みをそろえた西側先進国がそろってエネルギー価格の高騰に苦しめられているのは周知の通りだ。少なくともこうした状況が早期に解消される見通しは遠のいたと言わざるを得ない。

世界に吹く逆風のなか中国はどうしているのだろうか。

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