世界中がエネルギー不足に襲われるなか、中国がしのげている理由

 

一過性の物価高騰やエネルギー価格の上昇はあったものの、欧州のような厳しい状況にはない。ハンガリーのオルバン・ビクトル首相が「欧州連合は(制裁で)自らの肺を撃ち抜き、経済は息も絶え絶えだ」と形容したのは象徴的だ。

危機感の違いは中国が制裁に参加しておらず、ロシアからエネルギーを確保できているからだと考えるのが自然だ。しかし、それだけではない。

中国は常にエネルギーが不足することへの警戒があり、その対策に頭を悩ませてきた。それは調達先の多様化や新規運搬ルートの開拓に余念がないことからも分かるが、インフレ対策としての備蓄にも力を入れてきた。

中国の備蓄の現状は天然ガスの視点から見ることができる。自ら天然ガス輸入大国と呼ぶ中国の対外依存度は44%──うち35%はパイプラインで65%がLNG──と高い。

輸入に依存する中国がエネルギー価格の高騰を意識したのは2021年の夏を過ぎたあたりだ。液化天然ガス(LNG)の価格は、11月末に2018年(年初)時点の2倍を超え、人々の生活を圧迫し始めた。

LNGの価格高騰はロシア・ウクライナ戦争の前から世界的な課題であったが、中国ではここに寒波の早期到来という要素も加わり暖房解禁の時期を前倒さざるを得なくなったためである。

エネルギー価格の高騰が市民生活を直撃するのを和らげるため、備蓄エネルギーが放出される。備蓄と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはり相国寺ガス田の存在だろう。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年7月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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