費用も全額「国が負担」。安倍元首相を国葬で弔うことは妥当なのか?

 

つい最近もありましたよね。政治の力…かどうか分からないのですが、伊藤詩織さんの性被害の件、逮捕状まで出ていたのに、警察の幹部、現在の警察庁長官である中村格さんが押さえた。

で、結局、その後30年間統一教会についてはメディアもほぼ一切取り上げないし、国会でも大きな問題にならずにずっときている。私は吃驚したのですが、スタジオにいた若い女性アナウンサーは、統一教会については今回初めて知ったということなのです。メディアにいる人でも統一教会のことを知らない。桜田淳子さんの話とか、新体操の方とか、テレビのタレントの方とか。有名人も色々と統一教会かその系列の組織に取り込まれていくストーリーがいっぱいありました。それを知らなかったらしいのですね。そんな形の中で、今度の安倍さんを殺害した容疑者がなぜ安倍氏のところに矛先を向けたのかという問いに対する答えの一端ではありますよね。つまり、今言ったことだけでは何の証明にもなりませんが、政治と統一教会との関わり、日本の政治家と統一教会との関わりというのは極めて深いものがありそうですし、それはずっと続いていたということでもあろうかと思います。

で、安倍さんが亡くなって、ではどうやって弔うのかということは非常に重要な問題だと思います。前々回くらいにも申しましたが、安倍さんは色々な問題を引きずってあの世に行ってしまわれたわけですよね。モリ・カケ・サクラはもちろん、経済政策であるアベノミクスの是非、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪、その他その他山のようにありますよ。こういうことは海外の首脳がこぞって弔意を表明してくれたとしても、日本国民としてはそれがどういう意味を持つのか分からないこともたくさんありますね。

【関連】日本にとって大損失。安倍元首相の死が「闇に葬ってしまった」モノ

評価が定まるのはずっと後の話だと思うのですが、にもかかわらず、現在の政府が国葬、つまり国を挙げて弔うということですよね。いや、今回は前回の吉田茂さんの時のように学校を午前中で終わりにしたり、役所を休みにしたりなど、そういうことはしませんと。弔意を強制するようなことはしませんと、言っていますが、それでも国葬の名で、全額国の負担でやるわけですね。これはね、やるべきではないですよ。あの、例えば政治家が亡くなったときに、家族や一族郎党、同じ政党の同志、同じ考えの人たちが弔うのは当然でしょう。一般的に人が亡くなれば、それはお気の毒にということはあるでしょう。しかし、国葬にしてしまうのは間違ったやり方だと私は思います。ただ、これに関しては閣議で決定してやってしまうのでしょうね。

以前、靖国の問題を取材したことがありましたが、それに近いものを感じます。あの、靖国にまつられている「英霊」とされる人たち。これは日本軍の兵士で、赤紙一つでひっぱられた人たちもいるわけですが、戦死したり病死、餓死したりした人たちです。この人たちに対して、日本の国のためによく頑張ってくれたという評価を国が行う、褒め称えるのは間違っていると私は思います。まあ、安倍さんは赤紙を渡す方の人ですけれど。そんなことを考えますね。

それからもう一つあるのは、葬儀というものに対する考え方はこの間大きく変わってきている。例えばお寺さんにお墓がある方も大勢いらっしゃるでしょう。何々家代々の墓とあり、裏側に何年何月何日に誰某が亡くなったと記述があり、そこにお骨が納められているという形。よく考えてみると、代々と言ってもそれほど遡れないんですよね。その問題も一つあり、あるいは遺骨に対する考え方も大きく変わってきていて、その実例にするのは恐縮ですが、私も親の遺骨については父も母も海に散骨しました。そうしたことも広がっていますし、そもそも有名人が亡くなっても、「葬儀は済ませました」という記事が多くないですか。お金をかけて、皆さんの時間をいただき、大きな葬儀場に人を集め、何百人何千人を集め、葬儀委員長がいて葬儀を行うことを嫌う傾向もある。そのときに、国葬というのは、時代遅れな感じがしてきます。

この記事の著者・内田誠さんのメルマガ

購読はこちら

 

print
いま読まれてます

  • 費用も全額「国が負担」。安倍元首相を国葬で弔うことは妥当なのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け