「チャイナリスク」問題への政治介入に日本経済界が戸惑う2つの理由

 

かつて日本の経済界は中国ビジネスに多くの不満を抱えていた。そして問題のトラブルシューターとして政治の役割を期待した。しかし、実際に政治が前面に立ち中国と対峙するようになると、彼らの期待はむしろ戸惑いへと変わっていった。

原因は主に二つある。一つは、中国自身の変化である。経済界の不満の声が政界に届き、彼らが動きだすまでに費やされた時間のなかで、中国自身が外国企業にとってのストレスを減らしたことが挙げられる。その一方で中国から得られる利益は年々増大しているのだから外国企業の満足度も上がる。いまでは政治に期待することも少なくなっているのだ。

中国は外国企業の知的財産保護のために国内法を改正し、貿易不均衡が指摘されれば、中国国際輸入博覧会(上海)や中国国際サービス貿易交易会を開くといった対応をし、クレームに耳を傾けるようになった。

経済界が戸惑っているもう一つの理由は、政治の介入が、当初経済界が期待したものとは違う内容になってしまった点だ。経済界が求めていたのは対中ビジネスの大きな流れを壊さずに個別の問題を解決することだった。だが、いまや中国との関係を断つような動きが目立ち、その主導権もほぼアメリカに握られ、対中ビジネスの可否を制裁への同調で求められるようになってしまった。

アメリカの目的は、対中ビジネスの環境改善ではない。中国を孤立させ、弱らせることにある。となれば当然、アメリカが優勢でも中国が弱っても日本企業の利益を守るのは容易ではないという環境が生れる。必然的に非合理的なチキンレースに巻き込まれてしまうからだ。

前述したように日本はかつて一度チャイナプラスワンに挫折したことがある。対中包囲網の形成がいかに困難であるのかを身をもって体験している──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年9月4日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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