犯罪多発都市に逆戻りのNY。治安を破壊されたビッグ・アップルの不幸

 

具体的な実態としては、週5日勤務のうち「2日出勤、3日リモート」というのが、一般的に見られるパターンです。実際にNYに勤務している人の話を聞くと、全体的には経営側は強く出ることはできず、色々と興味深い現象が起きています。

例えば、企業にもよりますが、「週末の後で出勤するのは気が重いので、月曜はリモートにする」とか、「金曜はそろそろ週末なのでリモートにする」というような傾向があるようです。昭和の日本なら、「月曜は這ってでも出てこい」などというパワハラ言動になりそうですが、真逆の世界があります。これが管理職になるともっと自由になるという感じです。

ある超大手の金融機関の金融機関の管理職の話では、「管理監督はリモートでOKなので、自分はかなり在宅率は高い」そうで、「でも若手は、職場でのコミュニケーションを楽しむとかあるので、結構出社している」などというのです。これも昭和の日本なら「率先出社しないと管理職は降格だ」などということになりそうですが、違うのです。

この「どうしてもリモートになってしまう傾向」ですが、単に勤め人が「在宅勤務のライフスタイルの快適さを知ってしまった」だけではないようです。アメリカの場合は、「デイリー業務は在宅の方がビュンビュン回る」つまり「生産性が高い」というのが証明されてしまっており、それで経営側も強く出られないということがあります。

実は、多くの人が通勤を嫌がる背景には、治安の問題があります。NYの治安は、過去30年、例えば今は別人となって「晩節を汚し」つつあるルディ・ジュリアーニが、NY市長として徹底的に犯罪撲滅をやったりして、どんどん回復して行ったのでした。

ですから、2019年ぐらいの時点では、マンハッタン島の中には特に危険な地区はないという状況にまでなっていたのでした。デブラシオ市長の時代には、治安はもう良いので、今度は交通安全とエコだということで、厳しい交通取り締まりと自転車の活用が推進されていたぐらいです。

コロナ禍は、この状況を一変させてしまいました。コロナ禍がどうして治安を悪化させたのか、これには多くの理由があり、それぞれが相乗効果となっているとしか言いようがありません。

「夜間人口が減り、昼間人口が激減して人通りが少なくなった」

「コロナ感染で警察力のパワーが減った」

「コロナのために失職して金がないので、ヤケになって犯罪に走る」

「コロナ禍の被害者という意識を持つと、犯罪への罪悪感がなくなる」

「コロナのクラスターが出たために、刑務所から犯罪者が釈放されてホームレス化した」

「未決者の拘置をする施設がパンクし、法律が緩和されたために逮捕されても拘置されない事例が増加」

「ホームレス対策がうまく行かず、特に寒い冬は地下鉄内にウヨウヨいる」

「トランプの仕掛けた保守化した最高裁が、NYの銃規制を否定しパニック」

これだけでも大変で、これに一部の「アジア系が白いマスクをしていると、自分達の人生を破壊したバイキンが歩いているように見えてボコボコにしたくなる」という意味不明で衝動的なヘイト予備軍がいるという問題が重なっています。

犯罪のパターンも色々と変化しており、2020年には無差別に車から乱射するとう犯罪が流行りました。2021年になると堂々と集団で店を攻撃する万引き強盗が多発しました。アジア系へのヘイトは、2020年から散見されて、社会問題化しましたが今でも続いています。

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