犯罪多発都市に逆戻りのNY。治安を破壊されたビッグ・アップルの不幸

 

そんな中で、2022年の夏はNYにおいて、強盗やひったくり、自動車泥棒などを含む凶悪犯罪が前年比で35.6%増加したという数字もあり、市内ではかなりイヤなムードが広がっています。具体的には「若者ギャング団同士の銃撃戦」「街中での衝動的な暴力」「モーターバイクを使った強盗」「地下鉄内での暴力」などです。コロナ禍が「ノーマル」に向かう中では犯罪は減るかと思ったら、悪いヤツまでどんどん外に出て活動しているという感じです。

この問題は、ニワトリか卵かという感じになっていて、治安が回復しないと、通勤者がオフィスに戻ってこないし、そうなるといつまでも人通りが増えずに治安が回復しないという、一種の堂々巡りになっている感じもあります。

イヤな話をもう一つすると、NYの衛生状態も問題が大有りになっています。まず、一時期ごみ収集の要員がコロナ禍でパワー不足になって、町中に生ごみが散乱するということがありました。これはアダムス市長が大型のごみ収集ボックスを導入したりして、やや改善してはいます。

ですが、コロナ禍を受けて「ネズミの大量発生」という問題が起きており、これはまだ十分に解決を見ていません。例えばですが、2020年には「レストランの屋内営業」が禁止されたために、多くの店が「歩道に仮設店舗」を建てて、営業していたことがありました。

以前から、季節のいい時にはNYのレストランには歩道にはみ出して、屋外営業することが許されていたのですが、その権利が拡大された格好です。ですが、その後、屋内での営業が復活すると、仮設の建物は不要になりました。ところが、これを取り壊して原状回復するには、まだまだ資金的な余力がないとか、途中で店が潰れてしまったという場合には、廃墟となった仮設店舗が残っているわけです。

そこがネズミなどの巣になっており、問題になっていますが、市の方もこのネズミの駆除とか、廃墟の撤去などには十分なパワーが投入できていません。今のところは、目立った健康被害は出ていないのですが、イメージダウンはかなりと言えます。

そんなNYなのですが、では不動産価格が低迷しているのかというと、全く違います。一時期は下がったのですが、コロナ禍前の水準まで戻っていて、手頃な賃貸物件に関しては、インフレと利上げの結果かなり暴騰しています。

この動きを受けて、マンハッタン島内には、どんどん新規の高層ビルの建設が続いています。最近の流行は、土地があれば大規模に再開発するというもので、例えばペン駅の西の「ハドソンヤード」とか、グラセンの西の「ヴァンダービルド」とかは超高層を何本もまとめた大掛かりなプロジェクトとなっており、東京の渋谷の再開発よりずっと大規模です。

また、ビルの建て替えで超高層にするとか、土地の狭い部分には「ペンシルビル」という細長い高層建築を建てるなど、とにかくマンハッタン島全体で工事をやっている感じです。

一体どこから資金が来るのかというと、不動産ファンドが人気化しているということもありますが、中国の資金が本国では不動産バブルがゾンビ化している中で、「中長期では絶対に儲かるNY物件」にジャブジャブ流れてきているようなのです。

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