それでは、アメリカ人の子供たちがみんな「自立」の概念を理解しているかというと、もちろんそんなことはない。こちらも例外は多く存在すると思います。
にも関わらず、二十歳を過ぎればグッと彼らは大人らしくなります。本質的な大人になると、少なくとも僕にはそう見えます。親子の絆を大切にし、経済的にもなるべく親の負担にならないように考えていく。大学生になっても仕送りをもらうのが当たり前、という風潮はこの国にはありません。
おそらくそれは教育から来ているのではと思います。学校教育に関して、やっぱり先入観抜きに見ても「自立」を促すようにできている気がします。公立の小学校、中学校のカリキュラムは各州、市町村で違うので、僕は子供たちの通う、ニューヨーク市の公立小学校の教育カリキュラムに限っての感想となりますが、「あなたは何がしたいの?」「どう考えているの?」と6歳児にも自分の意見、主張に耳を傾けていく。
子供時代は「子供」として社会全体が守っていく。大人になれば「大人」として自身の責任で、自分の力で生きていけ。その為に子供時代にシッカリとそれぞれの「個」としての意見、主張を考えさせるようにしていく。「手を合わせてくださーい。いただきまーす!(日直)」「いただきまーす!(全員合唱)」で同じものを食べることは、こっちのランチ時間に見ることはない。
子供時代に「大人」ぶり、大人になった後(血縁上の)子供だからと主張し、仕送りを送ってもらう日本とは明らかに違う気がします。
そこだけを考えると、アメリカかぶれではないと自覚した上で、教育に関してだけはこっち(NY)でよかったなと思うのでした。
息子が6歳の頃、学校から帰ってきて「今日はジャケットを自分で着られるように先生に教えてもらったよ」と言います。親に頼らず服を着るところから授業で教えてくれるのは素晴らしいなぁと思っていたら、
「まず、こうして、、」とジャケットを床に直に置きます。「え!待て」と驚くパパを無視したまま、「で、こうして、、、」とそのジャケットの上を前転(でんぐり返し)して、起き上がったら着衣すしている状態…。
「ほら!」と得意げな息子の背中を払いながら、「うーーーーん…、、やっぱり、日米、どっちもどっちだな」と思ったのでした。日本人はまず着る服を、地面には置かない。
(メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』2022年9月11日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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