時代の寵児が一転。なぜFTXは一夜にして破綻に追い込まれたのか

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ブランドアンバサダーを務めていた大谷翔平選手が投資家から提訴されたことも手伝い、日本でも大きな注目を浴びた「FTXトレーディング」の経営破綻劇。時代の寵児と呼ばれたサム・バンクマン・フリード氏率いる同社は、なぜかくも簡単に追い詰められてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、Windows95を設計した日本人として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、事の次第を分かりやすく解説した連投ツイートを紹介。さらに「トークン・エコノミー」を活用したビジネスがいかに危ういものであるかを指摘しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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私の目に止まった記事:暗号資産取引所FTX騒動

FTX drama

暗号資産取引所として台頭して来たFTXが、世界最大の暗号資産取引所であるBinanceのCEO、CChangpeng Zhao(CZ)のTwitterでの発言をきっかけに「取り付け騒ぎ」を起こし、Binanceによる買収という形での救済を受けなければならなくなってしまった件を分かりやすく解説した連投Tweetです。

FTXは、2021年10月には、Sequiaから$420million(企業価値$25billion)、2022年1月にはParadigmから$400million(企業価値$32billion)を調達する、「飛ぶ鳥を落とす勢い」のWeb3ベンチャーで、Sequiaからは「Trillionaireになる運命の人物」とまで高く評価されていました(「Sam Bankman-Fried Has a Savior Complex-And Maybe You Should Too」)。

そのFTXを一晩で破綻に追い込んだのが、以下のCZのTweetです。


Liquidating our FTT is just post-exit risk management, learning from LUNA. We gave support before, but we won’t pretend to make love after divorce. We are not against anyone. But we won’t support people who lobby against other industry players behind their backs. Onwards.

保有しているFTT(FTXが発行している独自通貨)を全部売却する(liquidate)というアナウンスですが、先日破綻したばかりのLUNAを引き合いに出して「LUNAを教訓にして(learning from LUNA)」と発言しているところに、強いメッセージ性があります。

さらに、FTXのCEO、Sam Bankman-Friedがさかんなロビー活動により、間接的にBinanceを攻撃している点を強く非難しており、これをFTXに対する「宣戦布告」と解釈した人も少なくありません。

Binanceは元々FTXの大株主でしたが、各国の規制当局との関係から、Binanceとの関係を断つ必要が生じ、Binanceの持つ株を、FTXが$1billionで買い戻したという経緯があります。その際にFTXがBinanceに渡したのが自主通貨のFTTで、今回、Binanceが売却すると決めたのはそのFTTなのです。

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