モスクワに空襲の危機。ウクライナ軍のロシア本土攻撃で迎えた新フェーズ

 

そんなコードネームで子供の頃からよく覚えていた名前なのですが、それが攻撃を受けてウクライナ側は戦果を得たと。ウクライナ側は自分たちがやったと認めているのは、ニューヨークタイムズのインタビューでウクライナ政府の高官が認めたというような伝えられ方をしているのですが、それ以外、公式にウクライナ側が自分たちの攻撃だということはまだ言っていないということです。

ロシア領内に対する攻撃ということですが、厳密にはこれが初めてということでもなくて、ハリキウの北側にロシアの補給基地が置かれている大きな町がありますが、そこに対する攻撃は既にかなり前に行われています。そのときも燃料とか弾薬庫が攻撃されたということです。ただ、今度の奴は国境のすぐ北側ではなくて、数百キロ中に入ったところに攻撃がされたということでは、ロシアにとってそうとう深刻だと専門家が仰っていまして、間違いなくそうだと思います。

プーチン大統領はその事態を受けて、「ロシアの防衛ということでは核兵器の使用も検討している」というふうなことを言っている。そして「報復もあり得る。殴られたら殴り返すのだ」って、これ変だよね。殴ったのはあんたの方でしょ。それでも、そんな理屈になっているようなのですが、もう一つ凄いことを言っていて、「私たちは気が狂ったわけではない。核兵器が何であるか、よく分かっている」。これ、手の込んだ脅し文句とも聞こえますし、あるいはそう簡単に核兵器を今度の攻撃に対して対置する、核による報復をするというわけではないのだという意味にもとれる。普通はそっち(後者)だと思いますけれど。まあ、なぜ核で攻撃しないのだと何かの会議で質問されて答えたということです。

ただ、これは今までとは全く違う事態が発生したということになりますね。ちょっとね、恐ろしい気がしています。で、2月に始まったウクライナ侵攻の過程で、本会議でどなたかも言っていましたが、ロシア軍、結構弱いね、軍隊として弱いね、強くないという感じで見てきたと思うのですよ。その印象からすればあり得べきことかなと思うのですが、ウクライナ領内から国境を越えて数百キロにわたっておそらく爆弾を抱えた無人機が飛んでいった。なんで撃墜されなかったのだろうという疑問がわきますね。これが数百機の無人機が飛んでいき、そのうちの何機かが着弾した、撃墜されずに、ということなら分かりますが、そういうことでもなさそうですよね。それぞれに全部爆弾をくくりつけるわけにはいかないでしょう。となると、そんなにたくさんの無人機を一度に飛ばしたわけでのないだろうし、今、言われているのは、旧ソ連のツポレフ141という番号がついたもの。ツポレフは大型の飛行機を作る生産集団の一つですけれど。ツポレフ144という、コンコルドのカーボンコピーと言われた飛行機(航空ショーで墜落した)を作ったのもツポレフでしたが。そのツポレフの偵察用の無人機を改造して攻撃に使ったのではないかと言われています。小さいですがジェット機なんですよ。

それはあり得るのでしょうけれど、だから撃墜できなかったのかと言われると、これは全く分からなくなってしまう。旧ソ連製の飛行機だから味方だと思ったなどということもあり得ないですし、あり得るとしたら電子戦というか、その飛行機をレーダーで捉えにくくするような何らかの技術が発揮されたのか。要するに数百キロもロシア領内を飛んで、そのときの目標で大爆発を起こしているわけで、まさにステルスですよね。ステルス自爆型無人機。そういうものをウクライナ軍がこの期間に作った、用意した、そして実際に使ったということだと思うので。

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