アパレル業界が縮図。日本をダメにした「グローバル化」と復権のカギは?

 

3.為替変動に左右されないビジネス

何でも作れる国なのに、国際競争で負ける理由は、コスト高である。しかし、コストは為替で変わる。そして、為替は政治で変わる。自分たちの力の及ばないところで、競争力は決められていく。急激な円高と円安が交互にやってくる度に、日本企業は淘汰されていく。これを防ぐには、為替に影響を受けない経営を行うしかない。例えば、輸入でも輸出でも儲かるビジネスモデルを作ることだ。

基本は付加価値の高いブランドビジネスである。最初から利益率を高く設定することで、販売価格は安定する。大量生産大量販売ではなく、販売できる量だけを生産し、プロパー販売比率の高いビジネスを行うこと。固定客を獲得し、安定した売上を確保すること。価格競争に陥らないこと等々が事業のポイントだ。

そもそも海外生産は、大量生産大量販売を維持するために行われたものだ。例えば、国内で高価格帯のコレクションラインを生産し、海外で低価格帯のセカンドラインを生産する。それらの商品を、海外市場と国内市場で販売する。あるいは、物販だけでなく、サービス業の業態開発を行う。

第二に考えられることは、国内で完結したビジネスを行うこと。国内で企画生産し、国内で販売する。そうすれば、少なくとも為替の影響は少ない。価格競争に陥らず、大量生産しないのなら、国内生産でも十分に対応できる。

バブル崩壊後に始まったグローバル化は、より広範囲の競争を招き、一握りの勝者と大多数の敗者を生み出した。そして、一握りの勝者になるには、高度な政治力が不可欠だ。

例えば、中国企業はビジネスと政治が密接に結びついている。その意味で、日本企業は中国企業と共通のルールで勝負していない。別々のルールで戦っているのだ。反則が許されている相手と勝負しても勝てるはずがない。これは個人的見解だが、善良な一般の企業は、グローバリズムを目指すべきではないと思う。

4.野蛮な株主優先経営

国内生産の商品を海外生産に切り替えると、製造業の利益がそっくり海外に移る。小売業が自社の利益だけを考えるなら、仕入れ先が国内でも海外でも関係ない。しかし、トータルな国益を考えると、その違いは大きい。結局、多くの日本企業は自社の利益だけを考えている。それを海外政府に利用されている。個人も同様だ。

政治家や経営者を1~2億円で買収し、年商1千億円の会社を乗っ取れば安上がりだ。自社で技術開発するより、他者の技術を盗んだ方が安上がりだ。個人が自分の利益だけを考えているなら、簡単に買収できる。その他の社員が犠牲になっても関係ないと考えるだろう。

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