少子化対策をしっかりするには、財政支出がむろん必要だが、やがて収入となって戻ってくる。長期的にみても、国の将来の担い手を育てることになる。
にもかかわらず、自民党内には少子化対策の財源を安定的に確保するために消費税を上げるべきだと言う意見がかなりある。自民党の実力者の一人、甘利明氏はテレビ番組で次のような発言をしたそうである。
「子育ては全国民に関わり、幅広く支えていく体制を取らなければならず、将来の消費税も含めて少し地に足をつけた議論をしなければならない」
長い目でみて国の経済にも好影響がある少子化対策を議論するのに、景気悪化の元凶である消費税引き上げを持ち出すのである。あまりにも浅はかな考え方といえよう。
そもそも、こういう政治家が与党にはびこっているから、この国の少子化対策はうまく進まないのではないか。独自の施策を地方自治体の首長が打ち出そうとすると中央官庁が足を引っ張る悪弊もいまだになくならない。明石市が子どもの医療費無料化を従来の中学生までから高校生へと拡大したさい、医療費増につながるという理由で国民健康保険の国庫負担金を減らされたが、これなどは泉市長が言うように「嫌がらせ」と受け取られても仕方がない。
もちろん少子化問題が子育て世帯へのお金の援助だけで解決できるものではない。それ以前の問題として、若者のいわゆる草食化やパラサイト・シングルに安住する傾向をどうするかということがある。
しかし、それは一朝一夕に解決できる問題ではない。まずは、多く子どもを持ちたいという気にさせる施策が必要だろう。その意味でも、明石市で泉市長が進めた子ども政策は、国も参考にすべき点が多いのではないか。
そのために必要な財源には国債をあてればいい。「国債は将来世代へのつけ回しだ」という財政健全化論議の土俵に乗るとすれば、将来世代(子ども)に先にベネフィットを渡し、のちに納税という形で返してもらうのだから、つけ回しではない、と反論することができるだろう。少なくとも、少子化対策に関する限り、積極的財政支出をためらうべきではない。
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