リーマンショック級の金融危機は起きるか?米銀行の経営破綻が相次ぐ理由

 

暗号資産の「衰退」仕向ける米財務省のサボタージュ

1つは、シリコンバレー大手の不調、特にメタ・プラットフォーム(メタ、旧フェイスブック)です。同社は昨年、2022年の11月10日に「1万1,000人のリストラ」を発表して話題になりました。この時は、広告収入不振の中で、新規事業である「メタバース」に資金を振り向けるためという説明でした。

そのメタは、今回もう一度「同じ規模のリストラを行う」という声明を出しています。ザッカバーグCEOは「今年は効率追求の年」だとして、VR(メタバース)事業にもメスを入れることのようです。背景には、2016年の選挙におけるロシアの干渉以来、セキュリティや不適切投稿へのチェックが甘いことで、信用をズルズル失っている問題、そしてそんな中でTiktokに市場を取られ広告収入が落ち込んでいるという問題があるようです。

ただ、このメタの問題は今のところは、個別の事象であって今回の銀行破綻とは関係はないと考えていいでしょう。

さて、もう1つの問題はクリプトカレンシー(暗号資産)です。ここ数年、この業界では低迷が続いています。こちらに関しては、とりあえずアメリカの金融当局は、数件の訴訟を提起して「勝手に発行したクリプトは通貨ではなく証券であるから、証券取引委員会(SEC)の規制を受ける」と主張しています。

そのこと自体は間違っているとは思えません。巨額の資金を集める企業が、売り出す「通貨」の根拠となる企業の財務内容、役員構成、取引実態などを公表して、透明性を高めるべきというのは間違ってはいないと思います。

ですが、仮に「クリプトは完全に証券である」とした場合には、大きな不便が発生します。例えば「1ドルで勝ったビットコインが値上がりして2ドルになっていた」として、その「2ドルを使ってコーラを買って飲んだ」瞬間に、「1ドルの売買益」がカウントされて、そこに投資収益の課税がされるとします。

その場合には、計算が非常に煩雑となり、事実上「コーラを買って飲む際に、ビットコインで決済」するのは不可能になります。ですから、何らかの税制上の優遇措置がされて、新しい暗号資産技術が実際に人類社会に利便性を提供できるようにすべきです。

一方で、金融機関の決済用のクリプトもあります。クリプトを使用すると、瞬時に世界中に送金が可能ですが、その際にも「コンマ数秒の決済の間に変動した価格に対する差益課税」などが義務付けられたら、せっかくの技術が実用になりません。

問題は、SECなり背後にいる財務省などが「クリプトを徹底的に規制」しようとしているのでは「なさそう」だということです。例えばですが、何件かある訴訟をそのまま放置して進行を遅らせるとか、税制に関して一向に実務的な案を出さないというような「サボタージュ」を行って、その期間にズルズルとクリプトが衰退するように仕向けている、そんな雰囲気があるわけです。

話題を少し転じますと、本稿の事実上の締切である現地13日(月)には大きな決定がありました。かねてより問題となっていたアラスカ州における巨大な新規油田開削計画「ウィロー・プロジェクト」について、バイデン大統領が承認したのです。

これは、ほぼ北極海に面したアラスカの「未開発地域」において、コノコ・フィリップス社が計画している巨大な油田開発で、向こう30年間の生産計画としては、日産20万バレル、全体で6億バレルという大規模なものです。全体としての油井の数は250に及びます。

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